深山のフェアリー -セリバシオガマ- (花期:8月~9月)

今回ご紹介させていただく「セリバシオガマ(芹葉塩竈)」は、ハマウツボ科シオガマギク属の多年草です。

シオガマギク(塩竈)の名前の由来

シオガマギクの仲間に見られる「塩竈(しおがま)」という名前は、海水を煮て塩をつくるかまど(竈)のことを「塩竈」といいそれが由来となっています。

かつて、日本各地の砂浜にこのような塩竈があり、その風景は絵になるほど風情があって美しかったといわれ、「浜で美しいのは塩竈」という言葉が生まれたそうです。

ちなみに宮城県のほぼ中央、仙台湾に塩竈市という日本有数の漁港を有する都市がありますが、塩竈のある場所として有名になったことから地名になったといわれています。

シオガマギクの仲間は葉っぱまで美しいことから「はまでうつくしいのはしおがま」を「葉まで美しいのは塩竈」として、塩竈という名前が与えられたといわれています。

山のシオガマたちもまた、美しい風景をつくっています。

深山のフェアリー

「セリバシオガマ(芹葉塩竈)」は、「タカネシオガマ(高嶺塩竈)」「ヨツバシオガマ(四葉塩竈)」「ミヤマシオガマ(深山塩釜)」といった本州中部における標高2500mより上に位置する高山帯に生える種とは違い、標高1500m~2500mに位置する亜高山帯の針葉樹林の林床に生息します。

また日本の固有種(※1)でもあり、本州の中部地方「北アルプス(飛騨山脈)南部」「中央アルプス(木曽山脈)」「南アルプス(赤石山脈)」「秩父山地・金峰山」そしてここ「八ヶ岳」の、狭い範囲に分布しているといわれています。

※1)固有種とは、その国、あるいはその地域にしか生息・生育・繁殖しない生物学上の種のことをいい、地域個体群の絶滅が、即座に種そのものの絶滅につながるので、保護対象として重要な意味をもっています。

セリバシオガマの和名にあるセリバとは、葉の形がセリ(芹)に似ていることに由来しています。ただ個人的感想ではありますが、セリバシオガマの葉は一枚一枚が羽根のように見えて、本っ当に美しいと思っています。まさに「葉まで美しい塩竈」。

そして、8月から9月頃にかけて咲かせる長さ約2cmほどの小さな花もまた可憐で、透き通るような白い姿には何かファンタジー的には、聖なるアイテムか!?とすら感じてしまいます。(賢者の森はファンタジー成分強めですみません笑)

花の形は、 “ 花の下唇 ” と呼ばれる部分が幅広く浅く3裂しています。その上に細くほんのり薄緑色をした “ 花の上唇 ” が接しています。

八ヶ岳南麓にて

多くの高山植物や山野草が持っている雰囲気と似ていて、セリバシオガマもまた派手で大きな花を咲かせるわけではありませんが、奥ゆかしさを秘めたような雰囲気が本当に美しくて、(個人的に)羽根を広げた神聖な何かが針葉樹林の木の下にたたずんでいるようにも見えます。こんな貴重で素敵な出会いがあるから、山は本当に楽しかったりします。

八ヶ岳南麓にて

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