美し森の秘境へ

こんにちは。みなさまは2018年のゴールデンウィークはいかがおすごしでしょうか?前半は好天に恵まれ、後半は残念ながら強風など各地でやや荒れた天気となってしまいました。残りわずかではありますが、最後までゴールデンウィークが充実したものになるよう願っております。

今回は、「美し森(うつくしもり)」の風景をご紹介させていただきたいと思います。

「美し森」といえば、当ブログ「賢者の森」でも、これまで2度ほど紹介している清里高原を代表する観光スポットです。ここ山梨県の北杜市大泉町にあり、清里駅の駅前通りを右折してからは、山梨県道11号線経由で2.6kmほどの道のりをひたすら真っ直ぐで辿り着ける標高1542m の山です。

見どころは多々ありますが、今回は美し森の中でも、5月下旬頃から6月上旬頃にかけて見ごろを迎える美し森の「秘境」に・・・(と、呼ぶほど険しくも遠くもないですが笑)スポットを当てたいと思います。

そこは、美し森のひらけた山頂からは八ヶ岳側の少し奥まった場所にあります。

美し森は、そこだけでも素晴らしい場所ですが、八ヶ岳への登山口としても知られています。八ヶ岳の最高峰「赤岳(あかだけ)」へと続く真教寺尾根の末端に位置しており、ここから旅立つ登山者様もよく見かけます。

美し森の山頂から、「秘境」へと向かう道はまさに、その登山道の途中にあります。山頂から八ヶ岳側へ進むとすぐに瑞々しい森の中へと入り、約5分ほど、ゆるやかに下りきった右側にその場所への入り口が現れます。

それでは、まずはその場所の風景をごゆっくりお楽しみください。

このピンクの美しい花は「クリンソウ」という、日本原産のサクラソウ科サクラソウ属の多年草です。春に株の中心から花茎を伸ばし、花茎をぐるりと囲むように同じ高さの場所に「サクラソウ」のような花を数輪咲かせ、それが階層状になります。

名前の由来は、そんな花の姿がお寺の屋根の先端に付いている「九輪(くりん)」に似ているところからきていると言われています。

草丈は、30cmから大きいものでは90cmほどにもなり、サクラソウの仲間では最も大型の部類となります。

ここは「クリンソウ」の群生地となっていて、クリンソウだけでなく、「ミズバショウ」の群生地でもあります。

ミズバショウは例年4月下旬頃から5月上旬頃までが見ごろとなっていて、クリンソウが見ごろを迎える頃には、その白く美しい花は姿を消し、花が共演することはありません。しかし移り変わる季節の中で、主役のバトンをつないでいくような関係もまた素敵な場所だと、個人的に思います。

人目につきにくい美し森の「秘境」は、八ヶ岳のきれいな水が小さな湿地を形成し、クリンソウやミズバショウをはじめ、貴重な草花をひっそりと育む場所となっています。

どことなく良い香りのするカラマツ林の中にあり、不思議とそこだけ光が降り注ぐような空間は、本当に楽園を思わせる場所です。

近年、日本の文化や美しい自然などがフォーカスされ、日本人だけでなく多くの観光客が各地を訪れるようになりました。

しかし、そんな観光地化したスポットで、本来足を踏み入れてはいけない場所に規制線を越えてまで踏み込んで写真を撮る人たち、植物や文化財を傷める人たちの問題がニュースで取り上げられてるのを見ると、とても悲しい気持ちになったりします。

多くの人に自然の良さや大切さを知ってもらえることは、とても喜ばしいことです。でも、自然にあるものは自然のままそっとしておいてあげたい・・・そんな思いもあって今回、「秘境」なんて言葉で表現させていただきました。

美し森の「秘境」に限らず、湿地は自然災害や人為的に簡単に壊れてしまいやすい場所です。もし、この地に来た折には、ぜひ見ていただき、その希少さや大切さも一緒に感じ、思い出とともに持って帰っていただけたら幸せです。

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