過去、私はゴールデンウィークを利用して、「雪の無い山」を目指して南へ出発し、小さな軽自動車で車中泊をしながら、四国・九州を巡る旅をしてきました。当時、奇跡的に西日本はあたたかな好天に恵まれ、各地であたたかい出会いにも恵まれました。
そんな旅を、数回にわたってお届けいたします。
4日目 その後
四国・九州を巡る旅は、4日目で、大分県「九重連山(くじゅうれんざん)」に登頂させていただきました。今回は5日目となりますが、前回までの4日目(全6話)で語ることができなかった九重連山下山後のお話から始まります。
湯布院温泉
これから向かう目的地は、九重連山から南西。県境を越えた先にある熊本県「阿蘇外輪山(あそがいりんざん)」です。しかし、無事夕暮れ前に下山した私は、まず恒例となっている癒しの温泉タイムを求めて出発したのでした。
このとき、どうしても行きたかった温泉は大分県で「別府(べっぷ)温泉」と並んで超有名な「湯布院(ゆふいん)温泉」でした。
しかし、湯布院は九重連山から阿蘇山に向かうのとは全く逆方向の北東方向にあり、かつ、道のりで約35km前後と少し離れた場所にありました。ただ名古屋から四国を越えて九州まで来た感覚の中では「すぐそこ」の距離でした。
湯布院温泉は、大分県由布市湯布院町にあります。すぐそばにそびえる標高1584mの「由布岳(ゆふだけ)」はこの地のランドマークとなっており、由布岳の恵みを受けた温泉は全国2位という豊富な温泉湧出量を誇っています。
町ぐるみの取り組みで、昭和の大規模温泉街に多く見られた歓楽性を極力排し、どこか田園的な名残を残した街並みは、女性に特に人気が高く、実際、観光客で賑わっていながら高原の観光地のようにゆったりしていて良い雰囲気でした。
この度も、残念ながら湯布院の写真が無く(当時の自分が恨めしい)、本当に申し訳ないのですが、湯布院の温泉では「御宿 ぬるかわ温泉」という温泉宿の立ち寄り湯を利用させていただきました。温泉も十人十色でいろいろありますが、隠し湯に入っているようなシンプル系の雰囲気もまた最高で、まさに旅の醍醐味です。
ちなみに、私はお風呂・温泉大好き人間なので、それ目的なら必ずお気に入りの「温泉セット(シャンプー・コンディショナー・ボディーソープ等いろいろ)」とタオルを持ち歩きますので、そこに「湯」があり、劇的に不衛生でなければほぼ不便なく入ることができます。とはいえ、静かな湯が好みなので、隠し湯的温泉は最高です。
湯布院の温泉と、街の雰囲気に癒され、次の目的地「阿蘇外輪山(あそがいりんざん)」へと出発となります。湯布院へは、今度は「由布岳(ゆふだけ)」への登頂とセットでまたいつかゆっくり来られたらと思いました。
5日目
5日目となる4月30日は全国的に雨。日本気象協会の記録によると、なんとこの時、釧路をはじめ北海道の北部や東部では雪となっていました。
平山温泉
雨も時折かなり激しく降ったりしていたため5日目は安全登山という訳にはいかず、これも旅の神様がもたらしてくれた回復のための「ご縁」ということで、近場でいける「ものすごい温泉」に一日中入り浸ろうと思い探し始めました。
未熟な検索技術ではありますが、全力で調べた結果、阿蘇(外輪山・俵山峠)から道のりで北西に約50~60kmにある山鹿市(やまがし)「平山(ひらやま)温泉」がすごいとの情報を掴みまして、そちらに向かうことにしました。
何がすごい温泉かといいますと、この平山温泉、周囲の温泉の成分には含まれていない硫黄分が含まれており、泉質の良さから「美肌の湯」として知られています。クチコミでも、「トロトロ」「ツルツル」など面白い言葉が見られます。
平山温泉では「日帰りスパ フローラ」という、日帰りのみの施設を利用させていただきました。ここは、大浴場、庭園露天風呂、遠赤外線サウナ、電気風呂の他、気軽に楽しめる飲食コーナーもあり、雨にも関わらず多くの人で賑わっていました。
実際、お湯の質が「トロトロ」「ツルツル」と表現され、美容液に体ごと浸かっているかの如く言われる意味がとても納得できるほどでした。この質の温泉は初めての経験でしたが、評判に負けぬ「ものすごい」温泉でとても楽しめました。
ここの温泉は、pH9.9の弱アルカリ性です。一般にpH8.5以上が「アルカリ性単純温泉」と呼ばれ、pHが高いほど肌の角質を取る働きが強く、古い角質層の新陳代謝を促進するため、くすみをとったり、ツルツル肌にしてくれます。
また、三大美人泉質(※1)のひとつである硫黄泉は、シミ予防、メラニン分解を促し、また生活習慣病、メタボ動脈硬化、高血圧など、様々な症状に効果が期待できます。
さらには万病の湯とされる弱放射能「ラドン」を含み、ラドンは全身の細胞を活性化する作用があることから、上記美肌効果と共に薬効の効果も期待できると言われています。
※1)三大美人泉質:「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」「硫黄泉」
ただ多くの人も言われているように、トロトロツルツルしすぎて、浴室内で滑って転倒しないように充分注意が必要です。余談ですが、個人的には、電気風呂はビリビリで身体が驚いてしまいいつまでも慣れず苦手です笑
俵山峠
このように4日目夕方以降から5日目は温泉漬けという(贅沢すぎる)一日で、かつ、「俵山峠」と題しておいてほとんどが大好きな温泉の話題で埋め尽くされてしまいましたが(笑)、5日目の夕暮れ前、次の目的地となる阿蘇外輪山「俵山(たわらやま)」の登山口となる「俵山峠」へと無事に到着したのでした。
6日目は阿蘇外輪山のなかでも南側に位置している山々を、俵山峠を起点に縦走(往復)する予定です。前述したように5日目はほぼ終日雨でしたが、天気予報では6日目は九州から東海にかけて気持ちが良いくらいの「晴れ」マーク。
半信半疑ではありましたが、標高710mの「俵山峠展望園地」の駐車場にて、休もうとしていると今まで見られなかった太陽が、雨上がりの湿気で霞みがかった空気の先、地平線に見られたのでした。とても美しい夕焼けでした。
そして風力発電の風車もまた、とても美しい風景の一部となっている俵山峠。みなさまもご存知のように、熊本は2016年4月14日以降相次いで発生した最大深度7という大地震によって、各地で壊滅的な被害に見舞われました。
ここに見えている風車の何基かも損傷が激しく停止しており、その後、修復を検討されたそうですが再始動には多額の費用がかかるため断念されたとのことです。
“ 損傷した道路も修復され阿蘇方面へのアクセスは震災直後に比べると回復しつつありますが、まだまだ以前の状態に戻るには程遠いのが現状です。 ”
現状も場所によってはそんな厳しい状況を伝える記事を目にします。お亡くなりになられた方がたのご冥福をお祈りするとともに、一日も早い復興を祈念いたします。
次回6日目は、阿蘇外輪山「俵山」「冠ヶ岳」などへの旅となります。高度感のある美しい景色でありながら、どこかほっとするのどかさと、車やバイクでのアクセスの良さから、当時ここでは多くの人に出会い、人々に愛され親しまれている場所なんだと感じました。
また、そんな風に多くの人が集い楽しむ場所へと戻っていくよう願いながら書いていきたいと思います。次回はそんな阿蘇の愛され山を、どうぞお楽しみください。
6日目へつづく。