ここ八ヶ岳南麓の山梨県北杜市には、「モミジ(紅葉)」がとてもきれいに見られることでちょっとだけ有名なスポットがあります。
ここは公園や遊歩道などのように、もともとモミジのための場所ではなく、言わば自動車用道路の脇に植えられている ” 並木道 ” です。
ただ、見事に大きく育ったモミジの、美しい枝ぶりや色づきは通りかかった人の目を惹きつけ、どこかで紹介されているのか・・・?クチコミで広がっているのか・・・?年々、この場所を訪れる人が増えているように思います。
モミジが木から散った後でも、歩道に紅の落葉が絨毯のように敷きつめられている風景は美しく、歩くとカサっカサっと鳴る乾いた音も心地良いです。
また、この頃の夏から秋へと変わる中でこの地に吹く風は、八ヶ岳からの凛とした清らかさと、どこか秋の香りが感じられて、とても癒されます。
きれいなモミジ色のつくり方
ところで、モミジのみならず、紅葉の色づきの美しさには、年によって、場所によって、個体によって微妙に差が出てしまいます。では、モミジをはじめ、木々が美しく紅葉・黄葉するための条件は何なのでしょうか?
そもそも、木々の葉はなぜ緑色に見えているか?ものすごく簡単にいうと、葉に数多く含まれ光合成をおこなっている「葉緑体(ようりょくたい)」という小器官によるものです。
もう少し詳しく説明すると、葉緑体に含まれる「クロロフィル」と呼ばれる光合成色素が光を吸収するときに、緑色の光だけが吸収されず反射して私たちの目に届いているためです。
光合成の効率は十分な光が降り注いているときには、気温25℃付近が最も効率が良いとされています。
つまり、秋になり気温が下がると光合成の効率も落ちるわけですが、葉は、それ自体も維持するために養分を消費しているので、光合成によって得られる養分が減少することにより、葉を維持するために使われる養分の方が上回ってしまいます。
これが、植物の生存にとって不利に働くため、植物(落葉樹)は落葉の準備を始めるのです。
まず、葉緑体のクロロフィルは生産・分解されることを繰り返しているのですが、クロロフィルの生産が抑制されていき、分解だけがおこなわれるようになります。
その結果、緑色が薄くなり、今までは緑色で隠れていた葉に含まれる他の色素の色が見えるようになります。
ちなみに、赤くなる葉を「紅葉」、黄色くなる葉を「黄葉」と呼びますが、「イチョウ(銀杏)」に代表される黄葉は、葉の中にもともと含まれていた「カロテノイド」という黄色の色素が見えてくることで起こります。
紅葉する木は、クロロフィルの生産が停止されるのと同じ頃に、葉と枝の間で物質の行き来が妨げられるようにもなります。
このとき、葉で作られたブドウ糖は枝に流れず、葉に蓄積されるようになります。
ここに、日光(紫外線)が当たることでブドウ糖が分解され、赤色の色素「アントシアン」がつくられ赤く見えるようになってきます。
ちなみに、美しく紅葉するイロハモミジなどの木々でも、最初の頃は、葉が茶褐色をしていてお世辞にも鮮やかとはいえない色をしています。
これは、クロロフィルの緑色とアントシアンの赤色が混ざって見えているためで、クロロフィルの生産停止とアントシアンの合成は葉の表面から徐々に深部へと進んでいき、最初は残念なくらい茶褐色の葉も、やがては美しい色に変わっていきます。
ただ、このことからも分かるように、アントシアン(赤色の色素)の合成には温度と光の条件が深く関わっていて、「昼夜の気温差が大きいこと」「葉に十分な日光(紫外線)を受けられること」、そして「大気中に適度な湿度があり葉が乾燥しないこと」が必要です。
参照文献:国立科学博物館『「紅葉」「黄葉」のしくみ』
美しい紅葉の条件まとめ
①昼夜の気温差が大きい
紅葉は一日の最低気温が約8℃以下になると始まり、5℃~6℃になると一気に進むといわれています。日中の温度が20℃~25℃で、夜間の温度が5℃~10℃、気温差で約15℃くらいになると美しい紅葉になるといわれています。
②葉に十分な日光(紫外線)を受けられる
陽当たりが良い場所にあるモミジの紅葉がとても美しいのは、まさに、この条件を満たしていたからだといえます。そして、山梨県北杜市は日照時間日本一です(笑)とはいえ、山の森の中にあるモミジが公園のモミジより陽当たりが良いはずがない(汗)
③大気中に十分な湿度があり葉が乾燥しない
乾燥しすぎてしまうと、葉が枯れてしまうため、適度な湿気も必要です。
「とあるモミジの並木道」の場所
今回ご紹介させていただいた「とあるモミジの並木道」は、小淵沢I.C付近の国道20号線から清里駅付近の国道141号線までを八ヶ岳の裾野を横断するようにして繋ぐ「山梨県道11号線(八ヶ岳高原ライン)」の「天女山入口」交差点から八ヶ岳とは逆側の麓側へ「山梨県道28号線」を約450m下った場所にあります。
麓側から上る場合は、中央道・長坂I.Cで下り、「長坂I.C」交差点を左折、その後、「五町田」交差点を左折し「山梨県道28号線」に入ります。そのまま約6.1kmしばらく道なりに直進し、「高原大橋入口」交差点を左折、八ヶ岳(天女山)側へ約3.1km上った場所にあります。
付近に、オーナーが「柳生博(やぎゅうひろし)」さんで有名なレストラン・ギャラリー「八ヶ岳倶楽部」や、昔からここにあって通りかかるといつも行列ができているカレー屋「ヴィラ・アフガン」さんがあります。
八ヶ岳南麓を紅葉散策で訪れる際には、「赤い橋(東沢大橋)」「黄色い橋(八ヶ岳高原大橋)」「吐竜の滝(どりゅうのたき)」など紅葉で有名な「川俣川渓谷(かわまたがわけいこく)」と併せていらっしゃってみてはいかがでしょうか?