天空の白山「白水湖~御前峰~大汝峰」(2012年10月)1話/全4話

今からちょうど5年前の昨日にあたる2012年10月20日土曜日、「両白山地(りょうはくさんち)」の白山を旅してきました。

両白山地は、岐阜県、富山県、石川県、福井県、滋賀県の5県に跨る山域で、今回ご紹介する「白山(はくさん)」が主峰の「加越山地(かえつさんち)」と、「能郷白山(のうごうはくさん)」を主峰とする「越美山地(えつみさんち)」に分かれます。それぞれの山地を代表する白山という山の名前から両白山地という名前がついています。

白山は、石川県白山市と岐阜県白川村に跨る山で、「富士山」「立山」と並ぶ「日本三霊山」のひとつとして名高い山です。かつては「越白嶺(こしのしらね)」という美しい名前で呼ばれていた時期もあったそうです。その後、白山と書いて「しらやま」と呼ぶ時期を経て、現在の「はくさん」になったといわれています。

今回、白山への登山道としては岐阜県白川村の「白水湖(はくすいこ)」別名:大白川ダムを起点とした平瀬道を使わせていただきました。白水湖は、硫黄分を含む水質をもっており、神秘的なエメラルドグリーンにか輝く美しい湖です。

しかし、当日の登山開始時刻は2時40分と深夜帯であったため、登山口周辺の風景は皆無でした。(登山口周辺の風景は、下山時のものがございますので、最後にお楽しみいただきたいと思います。)

木のゲートには「ようこそ白山国立公園へ」と書かれています。その右側に立っている3本の丸太には右から「白山国立公園」「平瀬道登山口」「白山室堂まで6.9km」と書かれています。

5時16分。地平線が美しく輝きはじめ、ここからしばらく神秘的な空間に包まれます。

登山口からの標準タイムで約5時間10分、標高にして約1442mほどを上りきると白山の最高点「御前峰(ごぜんがみね)」に到着します。太陽はまだ地平線の下。ダウンジャケットを着込んで、しばし御来光を待ちます。

6時2分。冷たく凛とした空気の中に、あたたかい光が射し込みます。この瞬間は何度経験しても、そっと手を合わせたくなるようなありがたさを感じます。

下記写真は方角で北北西を望んで見える景色になります。ここから見える山は白山一帯となり、右に見えるピークが「剣ヶ峰(けんがみね)」、奥に見えるピークが「大汝峰(おおなんじみね)」と呼ばれる場所です。これに、今いる白山の最高峰である御前峰を加えた3つを総称して「白山三峰」とも呼びます。

現在地:御前峰(2702m)、写真右:剣ヶ峰(2677m)、写真奥:大汝峰(2684m)

南南西方面の眼下には、「白山室堂(むろどう)」「白山比咩神社奥宮祈祷殿(しらやまひめじんじゃおくみやきとうでん)」が見えます。

ちなみに室堂とは、もともとは山岳信仰や神奈備(神が鎮座する場所)がある神体山に建立された、修験者が宿泊したり祈祷を行ったりする堂を指す言葉で、白山室堂ビジターセンターとなった今でも、宿泊・売店・お昼の軽食・公衆電話・公衆充電器(現在不具合のため利用中止)・郵便局・診療所・トイレ・濡れた服を乾燥させるための乾燥室など、十分な設備が整う白山登山の中心基地となっています。

そして、室堂からやや左、方角にしてほぼ南に目を移すと「別山(べっさん)」が見えます。この写真からは確認できませんが、別山の右奥に「三ノ峰(さんのみね)」という山があり、前述した白山三峰に、この二座を加えた総称を「白山五峰」と呼びます。

当時この別山で、とても貴重で神秘的な風景が見られました。この美しい雲の流れ、お分かりいただけますでしょうか。

これは、山の稜線をこえて流れた雲が、山にそって滝のように落下しながら消えていく現象で「滝雲」と呼ばれるものです。

では、周囲にある代表的な山々を少し見てみたいと思います。

東南東に位置する「木曽御嶽山(きそおんたけさん)」です。

こちらはほぼ真東に望める「乗鞍岳(のりくらだけ)」です。

北東に広がる「飛騨山脈(ひださんみゃく)通称:北アルプス」の山々です。

その北アルプスの中でも、特徴的な天を衝く槍の如き「槍ヶ岳(やりがたけ)」、圧倒的なスケールの岩稜をもつ「穂高連峰(ほだかれんぽう)」、日本屈指の名峰です。

白山比咩神社奥宮(しらやまひめじんじゃおくみや)です。こちらには、白山比咩大神(しらやまひめのおおかみ)=菊理媛尊(くくりひめのみこと)、伊弉諾尊(いざなぎのみこと)、伊弉冉尊(いざなみのみこと)の三柱の神様が鎮座されています。

ちなみに、2016年に放送されたNHK大河ドラマ「真田丸」で、主人公:真田幸村(信繁)の父である真田昌幸の居室や、軍議がひらかれる大広間にかけられていた掛け軸に書かれた「白山大権現」は、この神社の神様と関係があります。

厳密には白山大権現は、白山の山岳信仰と修験道が融合した神仏習合(日本土着の神祇信仰(神道)と仏教信仰(日本の仏教)が混淆し一つの信仰体系として再構成(習合)された宗教現象)の神様です。しかし、現在全国の白山権現社の多くは、菊理媛神(白山比咩神)を祭神とする神道の白山神社となっています。

「天空の白山」第1話はいかがだったでしょうか。実は当時、ここへは第一の目的として「お祈り」に来ました。

霊峰白山。

今考えても、神様に見守っていただいてるかのように本当に素敵な景色につつまれ、その後の登山も楽しむことができました。この御前峰での景色が一番心に強く残っていて、ゆえに今回は「天空の白山」という題名をつけさせていただきました。

第2話は、ここから、大汝峰方面へ出発します。白山は、火山であることからその噴火の名残として大小さまざまな火山湖が点在しています。下界では見られない美しい色の池を巡りながら、時に、庭園のような植生の中を歩いたりします。

人には、好みの山というのがいろいろあると思います。

私は、八ヶ岳南麓にいて、この地の母なる山、八ヶ岳が大好きです。そして白山のように山頂付近が広く平らで、湖があったり、植生が豊かで、天空の楽園かのような雰囲気の山が、完全に好みのタイプで大好きです。なので、木曽御嶽山も本当に大好きでした。

ゆえに、写真もいっぱい!想いもいっぱい!なのですが、今回も丁寧に、心を込めてこの白山の旅をお伝えしていきたいと思っております。続きの旅もどうぞご一緒くださいませ。

<第2話へつづく>

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