これまで当ブログ「賢者の森」にお付き合いくださってきた読者の皆様は、既に、なんとなく感じてくださっていることと思いますが、私は・・・
「地元大好き人間」です (TωT)☆
しかしながら、私の住んでいる山梨県北杜市の好きなところは?と、聞かれると、それほど多くは答えられません。それは何故かと言うと・・・
「豊かな自然」という一言に集約できてしまうからなのです(笑)
ただ、「豊かな自然」の中には、山々の風景や、貴重な動植物、美味しい作物、そんな自然と歩み育まれた文化や歴史など、さまざまな魅力が詰まっていたりして、「水」も誇れる魅力のひとつです。
今回は、そんな山梨県北杜市の「水」から、「三分一湧水(さんぶいちゆうすい)」という、日本の「名水百選」にも選ばれている名水をご紹介いたします。
日本名水百選とは
「名水百選(めいすいひゃくせん)」とは、1985年(昭和60年)3月に環境庁(現・環境省)が選定した全国各地の「名水」とされる100ヵ所の「湧水(井戸を含む)」「河川(用水を含む)」のことです。
近代産業の高度化や生活様式の向上等に伴い水利用の複雑化や、水価値の多様化が進む中で、水質汚濁も進んできました。
そんな状況に対し、元の清流を取り戻そうとする地域住民の運動や、きれいな水を大事に護ろうとする活動などが各地で積極的に実施されており、古くから今に引き継がれる「名水」を再発見し、広く国民にそれらを紹介することで水質保全の啓蒙普及を図る目的で選定されました。
国の依頼によって各都道府県から報告された784件の調査対象から、以下のような基準を考慮して選定されました。
①きれいな水で、古くから生活形態、水利用等において水質保全のための社会的配慮が払われているもの。
②湧水等で、ある程度の水量を有する良質なものであり、地方公共団体等においてその保全に力を入れているもの。
③いわゆる「名水」として故事来歴を有するもの。
④その他特に自然性が豊かであるが、希少性、特異性等を有するなど優良な水環境として後世に残したいもの。
⑤規模。
なお、環境省は2008年(平成20年)6月、新たに「平成の名水百選」を選定し、これに対して名水百選は「昭和の名水百選」とも呼ばれています。両者に重複は無く、合せて200選となっています。
ここ、山梨県北杜市においては
「昭和の名水百選」には
・八ヶ岳南麓高原湧水群
・白州/尾白川
「平成の名水百選」には
・金峰山・瑞牆山源流
の、合せて3ヵ所が選ばれるという、日本でも有数の「名水の里」と言えます。
ちなみに、名水百選における「名水」とは、上記①~⑤などの基準で選定されたもので、飲用に適することを保証するものではありませんので、飲用に供される場合は、その名水が所在する自治体にご確認ください。
八ヶ岳南麓高原湧水群とは
八ヶ岳の峰々に降り積もった雪は伏流水となり長い年月をかけ、麓に清らかな泉となって湧き出します。八ヶ岳南麓にはこのような湧水がいくつか存在しています。
代表的なものに「三分一(さんぶいち)湧水」「大滝(おおたき)湧水」「女取(めとり)湧水」があり、その他に50ヵ所以上あると言われていますが、現在28ヵ所以上の湧水が確認されています。
標高約1000m付近に点在するこれらの湧水群は、利水が不安定なこの地域において、古くから重要な役割を果たしてきました。
これらは合せて「八ヶ岳南麓高原湧水群」として、1985年(昭和60年)3月、「日本名水百選」のひとつに選定されました。
三分一湧水とは
「三分一湧水(さんぶいちゆうすい)」という名前の由来は、その昔、湧水の利用を巡り長年続いた水争いを治めるため、三方の村々に三分の一づつ平等に分配できるように工夫したことからきています。
三分一湧水のシステムは戦国時代に甲斐(山梨)を治めていた武将「武田信玄(たけだしんげん)」が、この地を訪れた際に、絶えない水争いを無くすために生み出したと伝えられていますが、信憑性は定かではありません。
湧き出た水は、堰(せき)の中心に三角石柱が設けられた利水施設に集められ、そこから3方向3つの集落に平等に分配できるようになっています。
3つに分けられた水は、東の水路は白井沢地区、真ん中の水路は三ヶ区(長坂上条・長坂下条・渋沢地区)、西の水路は大井ヶ森・日野地区へと流れていきます。
湧水量は、1日8500トン、水温は年間を通して摂氏10度前後を保っています。
水量が豊富であるため昔から生活には欠かせない水としてこの地区の人たちに利用されてきました。現在では、湧水は、利水権を持つ地区住民で組織する管理組合や地元住民によって管理され、農業用水として重要な役割を果たしています。
大荒れの碑
この石は、1943年(昭和18年)9月5日、山津波(山崩れによって、多量の水分を含んだ岩石・土砂が流れ落ちること。=土石流)のために押し上げられたものです。
付近一帯の土石流の跡もまた、その時のもので、家は流され多くの人が亡くなりました。「三分一」も埋められ、田畑も押し流され、惨憺(さんたん)たるものでした。
「大荒れの碑」は、旧六ヶ村の人々が水元坂本家と力を合わせて「三分一」を掘り出し元の通りにした功績を讃え、併せて、山津波が周期的に起こることを後世に伝えるために記されたものです。
三分一湧水と水元坂本家
三分一湧水は古くから下流集落の命の源泉であり、住民はこれにより田畑を耕し、暮らしを立ててきました。
三方向に等量に分水する独特の手法は、争いを避けるための先達の知恵であり、学術的にも高く評価されています。
そのような歴史の中で、26代を数える旧小荒間村の坂本家は累代「水元」と敬称され、湧水の維持はもとより、村落間の和平を維持するために尽力してきました。
今も、毎年6月1日に、同家を主座に関係集落立会いのとも分水行事が行われるのはその故です。
2002年(平成14年)7月、甲府市にお住いの坂本家当主静子氏によって、町の懇望に応え、三分一湧水周辺一帯の所有権をお譲り下さることになり、今に至っています。
ここには「三分一湧水と水元坂本家」の由来の一端と、長坂町の深い感謝の意が記されています。
三分一湧水と再生可能エネルギー
「再生可能エネルギー」とは、
・絶えず資源が補充されて枯渇することのないエネルギー
・利用する以上の速度で自然に再生するエネルギー
という意味の用語です。
具体的には「太陽光」「太陽熱」「水力」「風力」「地熱」「波力」「温度差」「バイオマス」などが挙げられ、石油などの「化石燃料」は含まれません。
また、水力発電のうち、大型のダムを用いるものについては環境破壊の少ないマイクロ水力発電と区別され、再生可能エネルギーとは別扱いされます。
「三分一」にはいくつかの再生可能エネルギーの発電施設があります。
水力発電
【クロスフロー水車発電機】
水力発電は水の力でタービンを回し、電気を作り出すものです。日本には水が豊富なので、多くのダムを造り、水力発電をしてきました。
「三分一」には、三分一湧水を利用した小型の水力発電機が設置されています。クロスフローは慣流(かんりゅう)という意味で、クロスフロー水車は比較的小水量の地点に採用されます。発生した電気は、電灯などに使われますが、余った分は熱となって放出されます。
太陽光発電
太陽光発電は、光エネルギーを電気エネルギーに変えるシリコン半導体の特性を利用した発電方法です。
「三分一」の三分一湧水館では、安全なクリーンエネルギーである、太陽光による発電をおこなっています。通常時、この設備により発電した電力は、電力会社からの電気と合せて施設の照明やコンセントなどに電気を供給しており、この建物の省エネに貢献しています。
風力発電
【プロペラ型風車発電機】
プロペラ型風車は、風力発電用に最も多く使われている風車です。
風車のプロペラは飛行機の翼のような形をしており、風を受けて回転します。風の速さよりも速い速度で回転することができるので、発電量が多くなります。その反面、高速回転となるために風切り音が問題となる場合があります。また、風向きの変動が激しい場所では、プロペラにかかる負担が大きくなります。
【サボニウス型風車発電機】
垂直に取り付けられた羽根が、風に押されて回ることにより発電する風車です。
風に押される力(抗力)で回転するために、暴走する心配がなく安全です。また、羽が回転していても、ほとんど音がしません。羽根はひねりが加わった形であるため、360°どちらの方向から風が吹いても(風向きが頻繁に変わっても)効率よく回転し続けることができます。プロペラ型風車に比べて回転数が上がりにくく、発電効率としては低くなります。
三分一湧水へのアクセス・営業時間&休館日・駐車場
電車で
JR小海線「甲斐小泉駅」から徒歩で700m、8分。
車で
【東京方面】
中央自動車道「長坂IC」から約7km、13分。
【名古屋方面】
中央自動車道「小淵沢IC」から5.2km、9分。
住所
〒408-0031
山梨県北杜市長坂町小荒間292-1
営業時間&休館日
営業時間
湧水館・・・9:00~17:00
直売所・・・9:00~17:00
そば処・・11:00~15:00
休館日
年中無休(但し、12月~3月は火曜日休館)
駐車場
普通車・・約80台
大型バス・・・2台
※駐車無料
三分一のフォトギャラリー
三分一湧水館
↑この日、スピーカーの上で仲良く並んでいた2羽の燕さん。置き物や飾りではありません(笑)
↑三分一の駐車場から見られる風景の一コマ。真ん中に見える山は「甲斐駒ヶ岳」、手前に白いきれいな花を咲かせる木は「ヤマボウシ」です。
駐車場は普通車80台(無料)、駐車場に隣接してトイレもあります。
三分一展望ホール
そば処 三分一
水の里公園
↑湧水橋を渡ると、水の里公園です。
↑右側から流れ落ち、小川に合流してくる水は三分一湧水からの水です。
↑湧水橋の下を流れる小川は「高川」という川です。
三分一湧水とビオトープ
↑三分一湧水の水源です。
まとめ
インフラが整備され、いろいろなものが便利で豊かになった現代でも、たまに雨の降らない日が長くなるとダムの貯水率が低下し水不足が生活や産業に大きな影響を与えたり、逆に、雨の日が長く続き過ぎたり大雨が降ると溢れた水によって「土砂の崩落」や「河川の氾濫」「洪水」など大規模な災害のリスクが高まります。
これからも「水」は私たちの生活と命に密接に関わっていくことと思います。先人たちの歩んだ歴史や教訓の中には、その大切さや、潜むリスクなど、さまざまな英知が詰まっており、これらが、時間の中に埋もれてしまわないよう、できるだけ多くの人に後世に伝えていきたい「バトン」のように感じました。