夏の花の代名詞として親しまれ、高原の草原を彩る植物として知られる「ヤナギラン(柳蘭)」。本州中部以北、ヨーロッパ・アジア・北アメリカなどの北半球・温帯地域に広く分布するアカバナ科ヤナギラン属の多年草です。
和名「ヤナギラン」は、葉が柳に似ていて、花を蘭にたとえたことに由来しています。英名「Fire weed(Fire=火 + weed=雑草)」は、北米などで起きる針葉樹林帯の山火事の跡に大群落となることが多いことに由来しています。
ヤナギランは山火事の跡地に咲くように、森林の伐採跡地や林道沿いの湿った草地などに群落をつくることも多く、山小屋周辺やスキー場などの裸地にいち早く侵入し根を下ろします。しかし、徐々に土壌が安定する中で他の植物が生育してくると群落が絶えてしまうこともあるといわれています。
ヤナギランの群生地としては、八ヶ岳連峰の北端「蓼科山(たてしなさん)」、その西に位置する「霧ヶ峰(きりがみね)」、長野県の北部に位置し標高約1400m付近に広がる「上ノ原高原(うえのはらこうげん)」の野沢温泉スキー場「ヤナギランガーデン」などが有名なようですが・・・
今回ご紹介させていただくのは南八ヶ岳の「編笠山(あみがさやま)」と「西岳(にしだけ)」そして「権現岳(ごんげんだけ)」の鞍部(※1)にある山小屋「青年小屋」の軒先に咲いていたヤナギランです。
※1)鞍部(あんぶ)とは、山の地形のうち、山と山に挟まれた低い場所を指す。馬に乗せる鞍(くら)のような地形になっているのでこのように呼ぶ。 同じ意味の英語・仏語で「コル」とも呼ばれる。
青年小屋は可愛らしい赤ちょうちんが印象的な別名「遠い飲み屋」として、山梨県のローカルテレビでもたびたび紹介されているちょっと有名な山小屋です。
ここに咲くヤナギランは大群生ではありませんが、赤ちょうちんと同じように印象的な可愛らしい様子で、青年小屋の看板娘のように咲いていました。
こちらは過去8月15日に撮影したものになります。その年の気候により多少の前後はありますが、例年8月上旬から中旬頃にかけて出会える花です。
タイミング良くこちらにお越しの際にはぜひ会って行かれてはいかがでしょうか。