ユリの女王 -カサブランカ- (花期:6月~8月)

「ユリ(百合)」は、ユリ科ユリ属の多年草の総称です。

北半球のアジアを中心にヨーロッパ、北アメリカなどの亜熱帯から温帯、亜寒帯にかけて広く分布しており、原種は100種類以上、品種は約130品種(アジア71種、北アメリカ37種、ヨーロッパ12種、ユーラシア大陸10種)を数えます。

Wikipedia「ユリ(百合)」より

そんな多くのユリの中にあり「女王」と称されるユリがあります。

それが、「カサブランカ」という純白のユリです。

↓これは私が育てているカサブランカなのですが、2018年は8月3日に開花を迎えることができました \(*T▽T*)/

カサブランカはオランダで作られた園芸品種のユリです。もともとはアメリカで交配されて作られたのですが、その後オランダに渡って品種が固定されました。

交配して作られたユリは大きく分けて「アジアティック・ハイブリッド」と「オリエンタル・ハイブリッド」という2つの系統に分類されます。

アジアティック・ハイブリッドは、アジア原産のユリを中心に交配された品種群で、エゾスカシユリ、イワトユリ、ヒメユリ、イトハユリ、マツバユリ、オニユリなどを原種としています。その特徴は丈夫かつ栽培も容易です。また、日向を好み香りはありません。

オリエンタル・ハイブリッドは日本特産の、ヤマユリ、カノコユリ、タモトユリといった森林に自生するユリを原種としており、カサブランカはこのオリエンタル・ハイブリッドの一品種であり代表的な銘花になっています。つまり、オランダ原産でありながら、そのルーツは日本の山や森林に自生するユリにあるということになります。

そのためカサブランカをはじめとするオリエンタル・ハイブリッドの特徴は、山や森林に自生していた原種の性質も引き継いでおり、日向よりも半日陰や明るい日陰を好みます。また、香りがあり優雅で華麗な花が咲くことも魅力となっています。

原種となっているタモトユリは、日本の鹿児島県吐噶喇列島(とかられっとう)にある口之島(くちのしま)、それも断崖にしか咲かないとても美しいユリでした。

そのためタモトユリという名前は、潮風の吹き付ける絶壁に命綱を下ろし掘った球根を着物の袂(たもと)に入れて持ち帰ったことに由来しています。

また、 L.nobilissimum という学名は「最も高貴なユリ」を意味し、当時を知る元漁師の人によると「昔は、船から絶壁を見上げると、真っ白いユリがそれは見事に咲いていた。香りで、むせるほどだった。」と振り返るほどでした。

戦後、貧しさを極めていた口之島では、そんなタモトユリの美しさが園芸品種の改良ブームに沸いていた欧米の園芸業者の目に留まり球根が高値で買い取られるようになると、タモトユリの乱獲がはじまりました。

その流通価格は、1953年に長崎県の園芸業者が出した料金表に「世界の芸術品、六寸内外で一球、20000円なり」と残っています。

1953年に鹿児島県が天然記念物に指定した時にはもう遅く、球根は国内に分散し海外に渡ってしまっていました。そして現在では、かつて口之島の断崖に咲いていたものと同じ純粋なタモトユリは絶滅してしまったとされています。

参照文献「朝日新聞」

現在、カサブランカをはじめ、多くの栽培品種に「上向き咲き」の特性を導入したのも、タモトユリだといわれています。

1970年代にオランダで生まれたカサブランカ。

オランダでは交配したり固定させた植物に都市の名前をつけることが多く、モロッコ王国にある最大の都市の名前がつけられました。

また、このカサブランカという言葉は casa blanca と書き、スペイン語で「casa = 家」「blanca = 白い」という意味を持ちます。

花言葉は、「高貴」「純粋」「無垢」「威厳」「祝福」「壮大な美しさ」「包み込む愛」など。かつて、日本の島の断崖に揺れていた美しいユリは悲しい運命を辿ってしまいましたが、その流れをくむカサブランカは、大切なひとへの贈り物として、結婚式のブーケとして、世界中で愛されるユリとなっています。

上を向き白く輝く女王の姿にはそんな面影が残っています。

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