過去、私はゴールデンウィークを利用して、「雪の無い山」を目指して南へ出発し、小さな軽自動車で車中泊をしながら、四国・九州を巡る旅をしてきました。当時、奇跡的に西日本はあたたかな好天に恵まれ、各地であたたかい出会いにも恵まれました。
そんな旅を、数回にわたってお届けいたします。
6日目 第一話
四国・九州を巡る6日目は「阿蘇外輪山(あそがいりんざん)」の旅です。
阿蘇外輪山は九州の中央部、熊本県阿蘇地方に位置し世界最大級の広大なカルデラ(※1)地形を形成する「阿蘇山(あそさん)」の一部です。数個の中央火口丘(※2)と外輪山(※3)から成っており、外輪山は南北25km、東西18kmにも及びます。
※1)カルデラとは、火山の活動によってできた大きな凹地(おうち)のこと。
※2)中央火口丘とは、カルデラ内に新たに形成された小規模な火山のこと。
※3)外輪山とは、カルデラの縁にあたる尾根の部分で「カルデラ縁」とも呼ぶ。
2007年に「日本の地形百選」に「阿蘇」として選定。2009年10月には「日本ジオパーク(※4)」「世界ジオパーク(※4)」に、カルデラ内外の地域が巨大噴火の歴史と生きた火口を体感できる「阿蘇ジオパーク(※4)」として認定されました。また深田久弥氏の「日本百名山」の一座にもなっています。
※4)ジオパーク(英:geopark)とは、地球科学的な価値を持つ遺産(=ジオヘリテイジ)を保全し、教育やツーリズムに活用しながら、持続可能な開発を進める地域認定プログラムのこと。ジオパークは、地球・大地を意味するジオ(Geo)と公園を意味するパーク(Park)とを組み合わせた言葉である。
5日目に到着した標高710mの「俵山峠展望園地」での車中泊にて迎えた6日目の朝。
その日はのんびりとお気に入りの「アルコールストーブ(※5)」でパスタを茹でたりしながら朝食をいただいていました。
※5)アルコールストーブとは、携帯用コンロのひとつで、燃料にアルコールを使用するタイプのもの。絶対的な火力では燃料にガスを使用するタイプの「ガスストーブ」に劣るものの、寒冷地や高地などの環境ではガスストーブは動作しないことがあり、それらをしのぐ性能を発揮する場合がある。
システムがシンプルなため故障などのトラブルが少なく、本体が軽量(一方で燃料は重め)、また、ほぼ無音で燃焼することから、縦走など長期間に渡って活動する人や、雰囲気を楽しむ人などに好まれ根強い人気を誇る。
その後、たまたまそこに居合わせたお兄さんと会話が弾み、お話の中で「雲海みました?すごいですよ!」と教えていただき、カメラを持ち駐車場から1分くらいの場所にある展望台へと走ったのでした。そこには驚きの光景が・・・!
「阿蘇五岳(あそごがく)」と呼ばれる中央火口丘を中心に、ドーナツ状に囲む外輪山までの凹地が見事に雲の海で埋め尽くされているのが分かると思います。こんなに近い場所に雲海を見たのは初めてだったこともあり、この時は本当に驚きましたし感動しました。前日がかなりの雨だったのも功を奏したのか、とても良い縁に恵まれました。
この場所は阿蘇外輪山を南北で分けた時の「阿蘇南外輪山」に含まれ、その中でも一番西側に位置しています。ここからの旅は、まずは、ここ俵山峠から南、俵山へ。その後、外輪山をさらに南側へと反時計回りに回り込んでいくような形で進んでいくことになります。
登山口となる俵山峠展望園地から俵山までは案内板で約90分(下りは約60分)の道のりです。ちなみに、以前にも少しお話させていただきましたが、当時、カメラの予備バッテリーというものを持ち合わせていなかったので、節約の為、山頂および山頂付近のみの写真で申し訳ありませんが、どうぞお楽しみくださいませ。
山頂では、とても仲の良さそうな中年くらいの夫婦のかたがご飯を食べていました。そこでも、ちょっとしたご挨拶から会話がはずみ、本当に良くしていただきました。山でのこうした一期一会の出会いもまた、思い出の中の宝物です。
次回第二話では、標高898m「護王峠(ごおうとうげ)」を経て「冠ヶ岳(かんむりがたけ)」へと阿蘇外輪山を南へ進みます。どうぞお楽しみに。
6日目第二話へつづく。