コスモを感じろ越百山

2016年(平成28年)1月1日に施行された改正祝日法で、日本の国民の祝日のひとつとして8月11日に「山の日」が新設されました。

この時、祝日の新設は1996年の「海の日」以来20年ぶりのこととなりました。なお、2020年の「山の日」は東京オリンピック閉会式の翌日にあたる8月10日(月)に変更されるそうです。

今回はそんな山の日にちなんで、「宇宙を感じるような」「全てを越えていくような」素敵な名前の山をご紹介させていただきたいと思います。

その山は、長野県「木曽山脈(きそさんみゃく)」通称:中央アルプスの主稜線上にある標高2613m「越百山(こすもやま)」です。

中央アルプスは本州の中央部を南北に連なる山脈で、飛騨山脈(ひださんみゃく)」通称:北アルプス、「赤石山脈(あかいしさんみゃく)」通称:南アルプスと共に、「日本アルプス」と称される日本を代表する山脈です。また、長野県の木曽谷と伊那谷に跨るようにそびえ、それらの谷に流れる木曽川と天竜川に挟まれた山脈でもあります。

実は中央アルプスの範囲については諸説あります。

最も広い範囲で見ると、北は長野県の塩尻市・辰野町・南箕輪村にまたがる「経ヶ岳(きょうがたけ)」から、南は日本百名山で美濃の最高峰「恵那山(えなさん)」を含み、さらにその南にある同県の阿智村・平谷村にまたがる「大川入山(おおかわいりやま)」まで。

最も狭い範囲は、ともに木曽谷と伊那谷を結ぶ峠である、北の「権兵衛峠」から、南の「大平峠」まで。この峠が、中央アルプスを横から見た時に切れ込んでいる鞍部(※1)になっているので「経ヶ岳」「恵那山」は独立峰のような山容に見えています。

※1)鞍部(あんぶ)とは、山の地形のうち、山と山に挟まれた低い場所を指す。馬に乗せる鞍(くら)のような地形になっているのでこのように呼ぶ。 同じ意味の英語・仏語で「コル」とも呼ばれる。

越百山の南には「南越百山(みなみこすもやま)」という標高2569mの山があり、ここより南側に進むと高山帯から亜高山帯へと入ります。

南越百山から先(南側)のルートは、昭和30年代に大規模に樹木が伐採されてから深い熊笹のヤブ(藪)に覆われるようになり登山ルートが不明瞭となっています。

そのため、中央アルプスを北から南へと縦走する場合、ヤブ山に近い南越百山からのコースを避けて越百山を縦走の終点とする人が多いです。

そんな理由から、越百山は「中央アルプスの北部と南部の境」に位置すると表現されることが多く、最高峰「木曽駒ヶ岳(きそこまがたけ)」や日本百名山「空木岳(うつぎだけ)」など高山帯の山々が連なる稜線(北部)で最南端の山となります。

越百山へは木曽側(西側)から登るルートを使わせていただきました。

出発点となる「伊奈川ダム上登山口」へは、JR中央本線「須原駅」から東へ15kmの地点になり、徒歩で行くと3時間近くかかるといわれ現実的にはタクシーかマイカーを利用するのが良い登山口となります。なお、須原駅にはタクシーが常駐していないので、事前に予約しておく必要があります。

登山口の駐車スペースは普通車約50台ほどです。

伊奈川ダム上登山口は越百山のほか、南駒ヶ岳、空木岳の登山口でもあります。

登山口から少し進んだところに林道のゲートがあり、その後、今朝沢にかかる橋を渡ったところで丁字路になります。左に進めば伊奈川林道を経て空木岳へ、右に進めば今朝沢林道を経て南駒ヶ岳・越百山へと至ります。

ここは、伊奈川国有林となっています。

実は、北アルプス(飛騨山脈)は中部山岳国立公園に、南アルプス(赤石山脈)は南アルプス国立公園に指定され、国立公園として国による自然の保全が図られていますが、ここ中央アルプス(木曽山脈)は国定公園にさえ指定されていません。

すぐ北西側に位置する3000m峰「木曽御嶽山(きそおんたけさん)」も同様の扱いとなっており、これは木曽ヒノキを主とする林業に配慮したものです。ちなみに、国立公園・国定公園は環境省が管轄しており、国有林は農林水産省の林野庁が管轄しています。

ここまで林道をひたすら進むと、国土地理院地図の標準タイムで約1時間、福栃沢にかかる福栃橋に着きます。水が本当にきれいで、川の流れが運ぶ清涼感のある風や瑞々しいせせらぎの音に癒されます。ここで標高は1300mを越えてきます。

福栃橋を渡った先で道は再び丁字路となり二手に分かれます。

左手に進めば南駒ヶ岳へ、右手に進めば越百山です。前述したように、ここまで約1時間にも及ぶ林道歩きとなりますが、ここから本格的な登山道の旅が幕を開けます。実は、下記写真・・・よく見ると自転車が置いてあります。

山小屋の人の持ち物でしょうか。それともここから旅立った登山者の持ち物でしょうか。林道区間が凄まじく長く、かつ自転車通行可な山ならば、これはこれですっごく良いアイデアだと思ってしまいました。笑

ここは四合目「下のコル」と呼ばれる場所です。シャクナゲ尾根と五合目の鞍部となっています。また、五合目とその先にある遠見尾根の鞍部は「上のコル」と呼ばれる場所で、別名「おこじょの平」という可愛らしい名前でも呼ばれています。

ちなみにオコジョとは、ネコ目イタチ科に属する動物で、ものすごく可愛いです。

ここは七合目にある「上の水場」への分岐です。ここから約100mほど進むと水場があります。私自身この水場を使ったことはないのですが、少し調べてみたところ、十分な量の冷たい沢水が流れているとのことです。

七合目で標高は約2140m、伊奈川ダム上登山口からの標準タイムで約4時間50分ほどの場所になります。

八合目から「福栃山(ふくとちやま)」山頂の北側をトラバースする(巻く)ように進みます。福栃山を越えるとその先には越百山がそびえており、その間の鞍部には黄色の屋根が特徴的な「越百小屋」があります。

越百小屋の標高は約2340mです。越百山の山頂はここから標高で約273m上になります。遥か先、正面に見える越百山・西側斜面はところどころが風化してできた砂礫地となっており、雪のように白く輝いています。

標準タイムで、越百小屋から約40分、伊奈川ダム上登山口からは約6時間10分。標高2613m・越百山の山頂に到着しました。

なおガイドブックなどで紹介されている越百山の標高は2614mで案内されていることもあります。

当ブログ賢者の森では、2018年8月11日現在の国土地理院の地図で、越百山山頂の三角点の標高が2613.6mとされていることと、山頂に立っている標識の表示と合わせまして2613mとご案内させていただきました。

認識としては、四捨五入で2614mでも大丈夫だと思われますので、何卒ご了承くださいませ。

当時この山頂に立った時、挨拶からいろいろお話をさせていただいたお兄さんがいました。お兄さんはここでお弁当を食べていましたが、そのお弁当に「黒毛和牛焼肉弁当」と書かれていたことだけは何故か強烈に印象に残っていて・・・私の思い出の中では今も「黒毛和牛のお兄さん」です。

森林限界を越えた山頂は白い大きな花崗岩と砂礫地、そして広くハイマツ(這松)で覆われており、ここまでの険しい道とは打って変わってなだらかになります。

また、非常に見晴らしも良く、東に南アルプス(赤石山脈)とその稜線越しに「富士山」、北部と南部の中央アルプス(木曽山脈)の山々、西から北にかけて「木曽御嶽山」・両白山地の「白山」・北アルプス(飛騨山脈)の「乗鞍岳」をはじめ「穂高岳」などの山々を望むことができます。。。が!

当時、ガスが上がってきてしまいまして十分な風景とはならずお届けできないこと誠に申し訳ありません(T人T)

一説には「越百山(こすもやま)」という名前は、ここへ登るのに、多くの峰(例えとして百もの峰)を越えていかないと辿り着けないということに由来しているといわれています。

ただ、cosmo(コスモ・コズモ) は、イタリア語で「宇宙」を意味することから、「コスモ山」と聞くだけでなんとなく印象に残る素敵な名前だったり、まるで日本の山じゃないような面白い名前だったりします。

また、とある年代の・・・1985年から1990年くらいにかけて少年時代をすごした人、そしてマンガやアニメ好きの人には分かる人が多いかもしれない「コスモ」という言葉がもつ別の意味があります。

コスモは、車田正美氏の「聖闘士星矢(セイントセイヤ)」というギリシア神話をモチーフにしたバトル系の漫画に登場する概念で、「聖闘士(セイント)」と呼ばれる戦士(人間)は体の中に秘められた「コスモ(小宇宙)」と呼ばれる力を引き出すことで超人的な能力を得て戦います。

コスモを引き出せるかはそこまで積み重ねてきた修行や乗り越えてきた試練、そして立ち向かっていく闘志や何かを守りたいと思う意志によって劇的に変わり、それが、逆境を跳ね返していったり勝利を得るためのカギとなります。

「コスモ(小宇宙)を感じろ」

とは、そんな漫画の有名なセリフではありますが・・・笑

どんなに小さくても夢を追いかけたり、どんなに小さくてもかけがえのない幸せを何より大切に感じたり、輝いている自分を追い求めたり、自分なりに悔いの無いと思える人生を送りたいと願っているみなさまに、そんな少年のようなアツい気持ちとすべて越えていけるような願いを、山の日に、コスモ山と賢者の森からお届けできたらいいなと思いました。

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