岩にふんわり山岳の梅 -イワウメ- (花期:6月~8月)

山を旅していると、標高を上げるほどに地形や気候などすべての環境が、生物にとって生きていくのに厳しくなっていくのが分かります。

それを証明するように、出発点である多くの登山口では様々な種類の木々や瑞々しい緑であふれていても、山頂へ向けて歩を進めていくと、それらの木々は徐々にモミ属・トウヒ属・コメツガなどの常緑針葉樹、落葉広葉樹ではダケカンバの比率が高くなり、大地に生い茂っていた緑も低くまばらになります。

やがて「森林限界」という高木が生育できず森林を形成できない境界線(標高)を越えると、そこは亜高山帯から高山帯と呼ばれる世界へと変わります。この時、日本アルプス中央部や富士山などでは標高2500mから2800mにもなります。

この天空の世界では多くの植物は生きられず、そこに根を張り花を咲かせる数少ない植物達に出会えることは、この場所に辿り着いた者にとって楽しみのひとつでもあります。今回ご紹介するのは、そんな世界の住人(植物)「イワウメ」です。

「イワウメ(岩梅)」は、イワウメ科イワウメ属の常緑の小低木で・・・枝が横に這うように広がっている「木」なのです。ちなみに、低木とは樹高が約3m以下のものをいい、その中でも約1m以下のものを小低木と分類されています。

岩礫地や岩壁などに張り付くように生育し、梅のような花を咲かせることからその名前が付きました。別名「フキヅメソウ(吹詰草)」は、風当りの強い岩場に密着した茎・葉の様子に由来しており、名前にも生きる環境の厳しさが伺えます。

イワウメの花は5枚の花弁でできているように見えますが、実は、1枚の花弁でできている合弁花類と呼ばれる植物です。代表的な合弁花類の植物にアサガオがあります。印象的な花の中心にある黄色は雄蕊(おしべ)で5個あります。

余談ですが「梅」に関することわざに、

“ 梅根性に柿根性 ”

という言葉があるそうです。

梅は、梅干しにしても、煮ても、焼いても、まだ酸っぱいことから、頑固でなかなか変わらない性質、いい意味では頑張り屋さんのことを「梅根性」。

渋柿は、焼けばすぐに渋がとれ、干し柿にすると一晩で甘くなることから、一見頑固そうに見えても変わりやすい性質、いい意味では柔軟なことを「柿根性」。

イワウメの「ウメ」の名は花に由来していますが、一見ふんわりモコモコな葉っぱの集まりと小さく可憐な花を咲かせる背景には、多くの植物が生きられないような厳しい環境があって、そんな中、岩の上や岩壁に張り付く姿はまさに、その名に恥じない「頑固な頑張り屋さん(梅根性)」っぽいです笑

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