強く、優しく、イワベンケイ。 (花期:6月~8月)

ぷにぷにとした葉、独特でかわいらしいフォルムでとても人気がある「多肉植物」。

多肉植物は、主に砂漠や海岸といった乾燥地帯に生育するものが多く、そんな厳しい環境でも生き抜いていけるよう肉厚な葉や茎などに多くの水分を貯めておける機能をもっているのが特徴です。サボテン科やアロエ科などは代表的な多肉植物として有名です。

多肉植物人気に伴って多くの人に知られるようになったのが、「セダム」などホームセンターやお花屋さんなどでも良く見かけるベンケイソウ科の多肉植物です。

そんなベンケイソウ科の中でも、高山帯の岩礫地など厳しい環境に生きるのが、今回ご紹介させていただく「イワベンケイ(岩弁慶)」です。

イワベンケイは、ベンケイソウ科イワベンケイ属の多年草です。

ベンケイソウに付く「弁慶」という名前は、平安時代末期の豪傑「武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)」からきていますが、強き者の代名詞として広く使われる言葉となっており、ベンケイソウもまたそんな特徴から名付けられたといわれています。

ベンケイソウの強さの秘密は「CAM型光合成(CAMがたこうごうせい)」にあります。これは、植物がおこなっている光合成でいくつかある形態の中のひとつで、その特徴として「CO2の取り込みを夜におこない、昼に還元する」ことがあげられます。

ちなみに CAM とは Crassulacean Acid Metabolism の頭文字をとったもので「ベンケイソウ型有機酸代謝」のことです。最初にこの代謝経路が発見されたのが、ベンケイソウ科の植物だったことにちなんでこの名前が付けられています。

CAM型光合成は、水分が慢性的に不足しており、かつ昼夜の温度差が大きい環境に適応したものだと考えられています。一般的な植物は昼に気孔を開けCO2を取り込みますが、こうした環境下では、同時に大量の水分を失ってしまいます。

ベンケイソウをはじめとするCAM型光合成をおこなう植物(=CAM植物)は、涼しい夜に気孔を開けCO2の取り込みをおこない、暑くなりやすい昼は気孔を閉じることで、水分の損失を最小限に抑えることができるという利点があります。

このような能力などもありイワベンケイは、栄養に乏しく風当たりの強い、岩礫・砂礫地に生育することができています。

イワベンケイは雌雄異株(しゆういしゅ)という、雌花と雄花とが別の株(個体)に生じる植物であり、雄株の花は黄色みが強く、雌株の花は赤みを帯び、秋に鮮やかな紅色の果実を作ります。

また、北欧では「ロディオラ・ロゼア」と呼ばれており、古くからハーブとして健康維持に愛用されてきました。新鮮な根茎からはバラのような芳香があるため「ローズルート」という名もあります。

イワベンケイ(ロディオラ・ロゼア)は、強い抗酸化作用を持っており、体と心のストレスを軽減してくれる作用が期待できるといわれています。

他の植物が生育できない環境に人知れず強く咲きながら、ふんわりした姿で癒しつつ、その薬理作用で人の心と体の健康に優しく寄り添ってきたイワベンケイ。

私自身、武蔵坊弁慶は実際に見たことがないので、その雰囲気はどこか、弁慶というより・・・水島新司氏による日本の野球漫画「ドカベン」の主人公・山田太郎の “ 気は優しくて力持ち ” な感じがしっくりくる気がします。

とはいえ、もし平安時代末期に「ドカベン」の方が知られていたら、「イワベンケイ(岩弁慶)」じゃなくて「イワタロウ(岩太郎)」になっていたかもしれないと思うと・・・やはり弁慶さんの豪傑な生き様や功績にも感謝か!?

・・・と、私の妄想は尽きません。。。

八ヶ岳にて

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