7月の末に庭で、ある幼虫を見つけました。庭には、無農薬で育てているパセリがありますが、とても美味しかったのでしょう、幼虫はひたすらパセリを食べ続けていました。美味しそうに食べる姿は人間と同じでとても微笑ましく見えます。
しかしこの幼虫、ご覧のとおりなかなか毒々しい模様をしています。何も知らない人が見れば本当に毒を持っているのでは?と疑うほどです。
実はこの幼虫、チョウ目アゲハチョウ科に分類されるチョウの一種で「キアゲハ(黄揚羽)」という種類のチョウになります。
そしてこの毒々しい模様にも意味があります。
この模様は「警告色(警戒色または危険色ともいいます)」といい、自分に害を及ぼす他の生物に対する警告の役目を担っています。
とくにアゲハチョウの幼虫は、頭部と胸部の間に「臭角(しゅうかく)」という1対の角をもち(ふだんは体内に収納しています)、角の表面から強い臭い物質を分泌させます。これは、外敵(捕食者)に対して、わざと目立つ模様と不快な思いを結びつけて覚え込ませることで、攻撃意欲を低下させ捕食されづらくなるという戦略だといわれています。
見た目がよく似ているアゲハチョウに「ナミアゲハ(並揚羽)」がいますが、キアゲハの方がその名の通り黄色みが強く、模様も違っていることから慣れると簡単に見分けることができます。とくに、幼虫の模様はまったくの別人(別虫)です。
また、ナミアゲハの幼虫がミカン科の植物を食べて育つのに対して、キアゲハの幼虫はパセリを食べていたようにセリ科の植物を食べます。
とくにパセリの栄養価は極めて高く、ビタミンA(βカロチン)、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、カルシウム、マグネシウム、鉄、食物繊維、葉緑素、カリウムなどの含有率が野菜の中でもトップクラスだといわれているので、これを食べて育つとは、ものすごい健康体のような気がします。
実際、健康体とは関係ありませんが、越冬する冬型の蛹(さなぎ)はー196℃の低温にも耐えるといわれています。
セリ科の野菜を育てている農家様にとっては、あれだけもりもり食べるキアゲハは、かなりの害虫で駆除対象になってます。
世界でも広く分布しているためよく見かけますが、アゲハチョウそれぞれがもつ特有のきれいな模様と、ひらひらと舞う姿は、華やかさの象徴みたいな存在として目を楽しませてくれます。