八ヶ岳南端の二峰 -編笠山&西岳- ①編笠山編(1話 / 全2話)

気象庁によると、2017年8月13日までの前20日間の山梨県北杜市大泉(ここ北杜市清里からかなり近い観測地点)の日照時間は71.3時間とのことで、これは平年比の56%という深刻な日照不足となっています。ゆえに当然、八ヶ岳および周辺の山々でも、登山に適した天気とは言えない日々が続いています。

当記事の投稿日のちょうど二年前にあたる2015年8月15日はなかなかの好天に恵まれ、吹く風もとても穏やかな天気でした。そんな中行ってきたのが、八ヶ岳の編笠山(あみがさやま)と西岳(にしだけ)でした。今回はその時のお話を全2話に分け、第1話目の今回は編笠山山頂からの様子を中心にご紹介させていただきたいと思います。

編笠山 登山口から山頂まで

今回、八ヶ岳の編笠山・西岳への登山口として、山梨県北杜市小淵沢にある観音平(かんのんだいら)から入らせていただきました。観音平はマイカーでアクセスできる上に、その周辺に見どころも点在し、歴史を知ることでさらに楽しめる場所です。

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観音平」(2017/11/23)

編笠山はその名の通り、編笠を伏せたような、なだらかな山容が山名の由来とされています。ただそのため、富士山と似て、一見単調な道が続きながら、山頂に近づくにしたがって傾斜角度が厳しくなっていく特徴があります。

編笠山山頂への登山道の大半は樹林帯です。その中で時折ひらける景色は、登山ではご褒美のような一瞬でもあります。山頂までの行程で約1/3ほど進んだ先にある雲海(うんかい)展望台はまさにそんな場所で、素敵な景色を見ながらの休憩を交え、また再び豊かな自然を楽しみつつの行程で高度を上げていきます。

さらに1/3ほど進むと押手川(おしでがわ)という場所に着きます。ここは景色がひらけているわけではありませんが、適度に日差しを遮ってくれる木々のもと、広々としたスペースが休憩するにはぴったりの場所です。また、ここは山頂方面に向かう道と、東側斜面を回り込みながら山頂北東側の直下にある青年小屋(せいねんごや)へと向かう道の分岐点でもあります。

今回はこのまま山頂方面へ向かいます。押手川を過ぎてからは急激に傾斜角度が増し、梯子(ハシゴ)での上りも現れるようになります。この辺りから徐々に、景色を覆い隠す木々が低く少なくなり、素晴らしい絶景を背に進めるようになり、道わきに咲く山野草のかわいらしい花もまた、目線に近い位置で楽しませてくれるようになります。

登山道の凄まじい傾斜がふと緩み、景色を遮る高さの植物がない場所に抜けたら、もう頂上に着いたも同然です。マラソン選手でいえば、42.195kmの最後にたどり着くスタジアムで歓声を浴びながらゴールするかのごとく、普段の生活からかけ離れた絶景を味わいながら、大きな岩がごろごろ転がる編笠山山頂の、(心の)ゴールテープを切っていただきたいと思います。(とはいえ実際のゴールは下山するまでですので下山も十分にお気を付けください)

編笠山 山頂からの風景

では、大変お待たせいたしました。ここからは編笠山山頂からの景色を南南東方面から北方面まで、ぐるっと見渡すようにご紹介させていただきますので、お時間の許す限りゆっくりとお楽しみくださいませ。

富士山方面

まずは南南東方面に目を向けてみます。眼下に甲府盆地がひろがり、その遥か彼方に富士山(ふじさん)が見えます。ちなみにこの位置からは見えませんが、登山口である観音平は山頂からほぼ真南の方向にあります。

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南アルプス方面

そこから右側へ、南南西方向に視線を移していくと赤石山脈(あかいしさんみゃく)通称:南アルプスの山々が見えてきます。ここ編笠山は八ヶ岳の中で最南端に位置しているので、鳳凰三山(ほうおうさんざん)、白峰三山(しらねさんざん)、甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)に代表される南アルプス北側の山々へ絶好の展望を誇っています。

左側に見えている山が鳳凰三山です。左から薬師岳(やくしだけ)、観音岳(かんのんだけ)、少し切れ込んで地蔵岳(じぞうだけ)と並んでいます。見えにくいですが、地蔵岳の山頂にはオベリスクと呼ばれる自然の巨石が立っているので、肉眼でも小さな尖がりを確認することができます。

そこから右側に大きく視線を移していくと際立って高い山がありますが、これが、日本で二番目に高い標高をもつ北岳(きただけ)です。北岳からやや左奥に間ノ岳(あいのだけ)、農鳥岳(のうとりだけ)と連なっており、これが白峰三山と呼ばれる山々です。

さらに右側に視線を移していきます。写真左側にあるのが北岳ですが、そこから右側、写真のほぼ中央にある山が甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)です。雲が出ていて見にくくなっていますが、ピラミッド型の山容が本当に美しく、日本アルプス屈指の名峰と呼ばれています。

その右側、奥に見えている山が仙丈ヶ岳(せんじょうがたけ)で、 “ 南アルプスの女王 ” と称されている山です。

さらにその右側、手前の山並みにあるギザギザと尖ったピークが続いているのが鋸岳(のこぎりだけ)で、富士川(釜無川)源流の山です。

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中央アルプス・御嶽山方面

この写真は方角でほぼ西を向いています。手前側の山並みに富士見パノラマスキー場のコースが見えますがその先、雲がかかっているやや左側のピークが入笠山(にゅうがさやま)です。入笠山は南アルプスの最北端に位置しているため、いわゆる “ 南アルプス前衛の山 ” のひとつといわれる山です。

その奥に見える山並みが木曽山脈(きそさんみゃく)通称:中央アルプスで、一番左側に見えるのが中央アルプス最高峰の木曽駒ヶ岳(きそこまがたけ)です。

そこから右側に視線を移していきます。写真右側の上部に、うっすらと木曽御嶽山(きそおんたけさん)を望むことができます。

北アルプス方面

上記写真からさらに右側に視線を移し、ほぼ北西方向を見てみます。長野県の茅野市、諏訪市の街並みから奥に諏訪湖が望めます。

白い雲の上、うっすらとかすみがかかって見えにくくなっていますが、写真一番左に乗鞍岳(のりくらだけ)が辛うじて収まっており、一番右に槍ヶ岳(やりがたけ)があります。槍ヶ岳のやや左側に穂高連峰(ほたかれんぽう)があり、飛騨山脈(ひださんみゃく)通称:北アルプスも圧倒的な存在感を放っています。

八ヶ岳方面

それでは、北方向に目を向けましょう。八ヶ岳は南北約30kmにわたって連なる山の総称で、八ヶ岳最南端であるここ編笠山からはまさに、奥へと連なる八ヶ岳の美しい姿を見ることができます。

写真左側に見えるのが阿弥陀岳(あみだだけ)です。そして写真右側に見えるのが八ヶ岳最高峰の赤岳(あかだけ)です。赤岳と阿弥陀岳を結ぶ稜線の中ほどに見える小ピークが中岳(なかだけ)です。小ピークとはいえ、赤岳と阿弥陀岳を結ぶ登山道において、この山の存在感はなかなかのもので、多くの登山者を苦しめています。ちなみに中岳の奥に見えているのが横岳(よこだけ)で、八ヶ岳で二番目に高い標高をもつ山です。

写真左側に見えているのが、ギボシと呼ばれている山です。写真右側、トゲトゲとしたピークが権現岳(ごんげんだけ)です。ここからは確認できませんが、権現岳の頂上には大きな宝剣が立っています。権現岳からの景色もまた素晴らしく、そこから望む赤岳の迫力は随一といえるくらいのものです。そしてこの写真の権現岳とギボシのちょうど真ん中あたりに権現小屋(ごんげんごや)があるのが確認でき、素晴らしい眺望をもっていることが容易に想像できます。

八ヶ岳南端の二峰 編笠山編 [おわり]

いかがでしたでしょうか?八ヶ岳最南端の編笠山は、その名の由来となった編笠のような美しい山容のため、頂上からは遮るもののない見渡す限りの絶景が広がっています。また、大きな岩で埋め尽くされた山頂付近は広く、ゆったりと過ごすのに最高の場所でもあり、おにぎりを美味しく食べることができました。きっとみなさまにとっても、ここまでの道のりや、ここでの景色のすべてが最高の調味料となることでしょう。

編笠山の山頂からは北東方向直下の青年小屋へとほぼまっすぐ向かう登山道が伸びており、この後、青年小屋を経由して八ヶ岳のひとつ西岳へと向かいます。青年小屋は、素敵な赤い提灯(ちょうちん)のかかったちょっと有名な山小屋です。編笠山すぐお隣の西岳は標高こそ少し低いものの、山頂は編笠山にはない魅力であふれていました。続きの旅は、第2話でお楽しみくださいませ。

編笠山の山頂から見られる西岳。八ヶ岳自身の影に隠れてしまうため、八ヶ岳の東斜面側に位置している山梨県北杜市の清里や大泉、長野県南牧村などからではどうしても見ることができない山でもあります。山の裾野がとてもきれいにひろがっており、美しい山容をしています。この後、西岳に向かいましたが、足を運んで本当に良かったと、素敵な思い出をつくることができたのでした。<第2話へとづづく>

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