とある夏の日に、こんなキレイな羽をもった蛾が家の扉にとまっていました。
この鮮やかな緑色の鱗翅目(りんしもく)は、シャクガ科アオシャク亜科のヨツメアオシャクという蛾です。
シャクガ科というのは、シャクトリムシ(尺取虫)を幼虫としている蛾の仲間です。
シャクガ科の蛾の幼虫=シャクトリムシの多くは、毛や針に覆われていない一般にイモムシ(芋虫)と呼ばれる虫ですが、実際は様々な点で異なっています。その最たるものとして、シャクトリムシ(尺取虫)という名前の由来にもなった愛嬌のある歩き方が挙げられます。
イモムシの多くは、身体全体にある足を使って歩きます。地面や木肌や枝や葉などに沿って(張り付くように)歩く安定した姿は完全にキャタピラのような頼もしさです。
対してシャクトリムシは、細長い身体の前後にしか足がありません。
そのため、前後の足で地面などにつかまった所で後足を地面などから離して身体を U字(実際には Ω のような形)に折り曲げると前足のすぐうしろまで後足をもってきます。
その後、前足を地面などから離すと、身体の長さを活かして身体を前方(進みたい方向)に伸ばし、再び前足で地面などにつかまった所で、これを繰り返し進んで行きます。
ものすごく簡単な図で説明すると、下記のような感じです。笑
Ω → _ → Ω → _ → Ω → _ → Ω → _
これが、全身を使って尺を測っているように見えることからシャクトリムシ(尺取虫)と名付けられました。ちなみに、 “ シャクトリムシに全身の尺を測りきられると死ぬ ” という言い伝えがある地方もあるそうです。
余談ですが、今回ご紹介しているのはシャクガ科の中のアオシャク亜科ですが、いくつかある亜科のうちエダシャク亜科の中には、木の枝に擬態するシャクトリムシがいます。
このシャクトリムシは体全体が樹皮のような紛らわしい色をしており、自身より太い木の枝に後足だけでつかまり、身体全体を一本の棒のように緊張させ、ある程度の角度をもって静止して立つことで、まるで先の折れた枯れ枝のように見せているものです。
昔、農作業の際に、お茶を土瓶に入れて持参し、枯れ枝のつもりでこのようなシャクトリムシに引っ掛けると、当然ながら引っ掛からずに土瓶が落ちて割れてしまいました。それで、このような擬態をするシャクトリムシを “ 土瓶落とし ” と呼んだそうです。
(Wikipedia「シャクトリムシ」より一部参照)
アオシャク亜科は、大部分の種で羽の表面が色が美しい緑色をもつことからアオシャクガ(青尺蛾)という名前がついています。熱帯を中心に全世界に分布しており、日本には73種が生息しているといわれています。
ヨツメアオシャクは、その鮮やかな緑の羽に四つの丸い模様が付いていることから、このような名前がつきました。葉と羽の色彩が良く似ているので、葉にとまることで食虫性の鳥獣の目から逃れることができるそうですが・・・
たまたま通りかかったうちに寄ってくれたのは嬉しいのですが、うちの木製の扉にとまっていては完全にバレまくり。。。