全2話でお届けしている奥秩父「金峰山(きんぷさん)」の旅。
前回の第1話では、山梨県北杜市須玉町「瑞牆(みずがき)山荘」の登山口を出発し、「富士見平(ふじみだいら)小屋」、「大日岩(だいにちいわ)」を経て、標準タイムで3時間20分、森林限界を突破したところにある「砂払ノ頭(すなはらいのあたま)」に到着したのでした。
雲と、緑と、癒しの金峰山の第2話、どうぞお楽しみください。
砂払ノ頭から、金峰山の山頂まで標準タイムで約1時間。見どころはやはり、このルートの名前にもなっている「千代ノ吹上(ちよのふきあげ)」です。千代ノ吹上は、山頂に向かって右側(山梨県側)がほぼ垂直に近い角度で切り立った岩稜帯にあります。
千代ノ吹上には、次のような伝説があり、それが名前の由来になっています。
“ 現在の山梨県須玉町に大工の夫婦が住んでいました。女房は千代と言い、夫婦ともども信仰が厚く、蔵王権現が祀られている金峰山山頂の金桜神社に登拝しようとしました。
しかし、金峰山は古くから女人禁制とされる霊山で、村人たちは、千代の入山を止めようとしましたが、千代は村人の制止を振り切って、夫婦ともども金峰山に登ってしまいました。
断崖絶壁にさしかかると、千代は滑落してしまいました。夫はこれを神の祟りと恐れ、山頂の祠の前で7日間の断食を行い、千代の罪が許されるよう必死に祈りました。すると、谷底から強く吹き上げる風に乗って千代が戻ってきました。
その後、この断崖絶壁を「千代ノ吹上」と呼ばれるようになりました。 ”
(伝説ではありますが)生きてて本当に良かった(T_T)
ちなみに、ここ(断崖絶壁)からは美しくたたずんでいる富士山と荒々しく切り立った岩場のコラボレーションが見られます。
下記写真、ほぼ写真中央の奥には群馬県の高崎市、前橋市などの街並みがあります。さらにその奥、雲で見えにくくなっていますが、実は、「日光白根山(にっこうしらねさん):標高2578m」「男体山(なんたいさん):標高2486m」が見えています。
日光白根山は栃木県日光市と群馬県片品村の境界に、男体山は栃木県日光市にある山です。日光白根山は写真のほぼ中央に、男体山はそのやや右にあり、とくに日光白根山は山頂が円錐型のきれいな形をしているのでわかりやすいです。
また、日光白根山は関東地方の最高峰でもあり、これより北や東に高い山はありません。
金峰山の山頂にある「五丈岩(ごじょういわ)」がだいぶ近くなってきました。砂払ノ頭から金峰山山頂までは、3つほどあるピークをアップダウンしながら、標準タイムで約1時間ほど進むことになります。
上記写真から進行方向右側、方角で南を望んでいます。金峰山から伸びる緑の尾根と、その先の富士山がとても美しいです。
標高2599m「金峰山(きんぷさん)」山頂に到着しました。金峰山は別名「奥秩父の盟主」とも呼ばれています。八ヶ岳連峰をバックに、木の指標がとても良い雰囲気でした。
(実はこの指標、縦書き・横書きの違いはありますが、八ヶ岳最高峰:赤岳の山頂にある指標によく似ているんです。)
ここまでの標準タイムは4時間20分です。山頂直下、長野県側に10分ほど下ったところに「金峰山小屋」という山小屋があります。
砂払ノ頭からずっと見えていた金峰山のシンボル「五丈岩(ごじょういわ)」です。
五丈岩に上っている人と比べると、その大きさがどれほど巨大なものかをお分かりいただけるかと思います。五条岩は、甲府や、ここ清里高原からも確認することができます。
金峰山山頂(現在立っている地点)と五丈岩の鞍部(あんぶ。山の地形で山と山に挟まれた低い場所を指します。馬に乗せる鞍の中間部のような形なのでこのように呼びます。)は、のどかな平坦地で、登山者の絶好の休憩場所となっています。
その右側に伸びている稜線は千代ノ吹上ルートです。
八ヶ岳連峰(奥)と瑞牆山(右手前)です。
瑞牆山(左)と小川山(中央やや右側のピーク)です。
この道を行くと、やがて「大弛峠(おおだるみとうげ)」に至り、金峰山登山では最短のルートになります。
私が今アスリートとして活動している中で師匠だと思っている人が「ソウルマウンテン(心の山)」なんて言葉をよく口にしていて、私にとってのソウルマウンテンは、たったひとつ挙げるとしたらそれは「八ヶ岳」なんだろうなって思っています。
とはいえ、それらを取り巻く山々に上り遠目に「八ヶ岳」を見た時に、「自分自身の心」を遠目に客観的に多角的に見させてくれるようで、怪我をしたときや、迷いが生じたときなどになんとなく上りたくなってしまうというのが理由です。
とはいえ、山に上る理由は「山が好き」「自然が好き」というのが一番なのは変わりないのですが、山は優しくもあり厳しくもあり、いろいろと教えてくれて好きです。
雲と緑が美しい、絶景と癒しの奥秩父・金峰山の旅でした。(2話/全2話)
<おわり>