過去、私はゴールデンウィークを利用して、「雪の無い山」を目指して南へ出発し、小さな軽自動車で車中泊をしながら、四国・九州を巡る旅をしてきました。当時、奇跡的に西日本はあたたかな好天に恵まれ、各地であたたかい出会いにも恵まれました。
そんな旅を、数回にわたってお届けいたします。
4日目 第一話
4日目は「九重連山(くじゅうれんざん)」の旅となります。九重連山は、大分県玖珠郡九重町(くすぐん ここのえまち)から竹田市久住町(たけたし くじゅうまち)にかけて広がる火山群です。まずはその中の「三俣山(みまたやま)」を目指して進みます。
前日から車中泊にて待機していた登山口である「長者原ビジターセンター」。出発は例によって日の出前だったのと、今回もかなりの長丁場であることが予想できていたので進むことに集中したため、写真は多く撮っておらず出発直後の写真が無いこと、ご了承ください。
長者原ビジターセンター登山口から九重連山は南東に大きく広がっており、最初に登頂を目指す円錐型の三俣山の北側斜面から東側、そして南側へ抜け、ほぼ270°(4分の3)近くを回り込むような形で進みます。このコースを、途中通る地名にちなんで「雨ヶ池」ルートと呼ばれています。
序盤、起伏の少ない道をゆくと「雨ヶ池(あまがいけ)」と呼ばれる池を中心とした開けた場所に着きます。湿地帯ということもあり、貴重な植生を守るため、道は木道となっておりコンパクトにした「尾瀬」のような風景といえばイメージしやすいでしょうか。。。写真が無くて本当にすみません。ここまでで標準タイムで約1時間10分~20分。
三俣山の北側斜面から東側へと抜けるとそこに広がるのは標高約1200mに広がる湿原「坊ガツル」。九重連山の北側、標高約1000mに位置している「タデ原湿原」とともに、中間湿原(※1)として国内最大級の面積を有する湿原であり、「くじゅう坊ガツル・タデ原湿原」として2005年11月にラムサール条約(※2)に登録されました。
※1)周囲より標高が若干低く周辺からの水が流れこんでいる湿原を「低層湿原(ていそうしつげん)」といい、周囲より標高が若干高く雨水や雪解け水によって水が流れ込む湿原を「高層湿原(こうそうしつげん)」という。「中間湿原(ちゅうかんしつげん)」とは、地形が変化していく過程で、低層湿原から高層湿原へと移行しているときの湿原を指し、文字通り両者の中間にあたる。
※2)ラムサール条約とは、湿地の保存に関する国際条約。
九重連山の中でも「久住山系」と呼ばれる山域を旅して、前半(北側地域)の見どころは、湿原がつくるとても美しい自然にあると思いました。
ただ、標高1000mを越える地域のゴールデンウィークということもあり、緑あふれる風景とはいきませんでしたが、それでも、心地よい水のせせらぎ、風にそよぐ優しい草の音、草の中どこかで遊ぶ小鳥のかわいらしいさえずりなど、単に癒しの空間としてだけでなく、様々な植生を育む貴重な空間であることも感じられます。
下記は坊ガツル湿原のパノラマ写真になります。
左右に見えている道は実際には一直線のものですが、パノラマ写真だとこのような感じになります。左の道から来て右の道へと進みました。
この道を進むとやがて「法華院温泉(ほっけいんおんせん)」という山荘にたどり着きます。そこは坊ガツルの南西稜に位置します。
法華院温泉は、鎌倉時代を開基とする九重山法華院白水寺として栄え、天台宗の一大霊場でした。明治の世になり信仰の山から登山の山へと変化する中、1882年、山宿としての歩みが始まりました。
九重連山はその広さやバリエーションの多さから様々な楽しみ方ができます。その中でも三俣山の山頂には登頂せず三俣山の周りを一周するコースは、湿原の美しい自然と火山の荒々しい大地を楽しめながら、比較的アップダウンも少なめな、人気のトレッキング(軽登山)コースでもあります。
そのコースは登山口である「長者原」から「雨ヶ池」を抜け「坊ガツル」へ、その後、「三俣山」の南側、分岐から西側へと回り込み、再び「長者原」へと至るのですが、南側へ向かう前に必ず通過するのが「法華院温泉」となります。
ここは登山者にとっては人気の休憩場所・宿泊場所であり、当日も、すごく混み合っていました。朝ということもあり、今から出発!という雰囲気の登山者ばかりで、登山道が混み合うのが恐ろしかったということもあり、法華院温泉は写真も撮らず、急いで素通りとなりました。(すみません)
法華院温泉までで標準タイムで約2時間5分の道のりです。
法華院温泉から三俣山の南側へは、ややきつめの上りが待っています。標準タイムでも約20分ほどで上り切り、振り向くと下記のような風景が広がっています。
また、三俣山を右手にして向かう登山道は下記のような風景が広がり、法華院温泉までの湿原の風景から一転して、荒々しい火山の大地が顔を出します。
上記の写真の地点から標準タイムで約1時間15分。三俣山の南側斜面から上る登山道の中腹まで辿り着きました。命の宝庫とも思える湿原の風景とは、完全に相対するような風景に圧倒されます。
三俣山は、その名の通り、いくつかのピーク(頂上)で構成されている山です。
実際には「三」ではなく、「北峰」「南峰」「本峰」「西峰」「Ⅳ峰」の5つのピークで成っています。しかし、この時に登頂したのは「西峰」→「南峰」→「本峰」の順で、文字通り「三」つでした。
ここからは三俣山の山頂の様子をどうぞごゆっくりお楽しみください。
生まれて初めて登る九州の山となる九重連山。長者原ビジターセンターの登山口から三俣山・本峰まで標準タイムで約4時間30分の旅でした。
次回は、三俣山から、上記「三俣山・本峰」の写真の奥にそびえている「久住山(くじゅうさん)」および周辺の山々をめぐります。長大な九重連山の旅は続きます。
4日目第二話へつづく。