愛され高山植物 -チングルマ- (花期:6月~8月)

高山帯ではまだ雪の残る6月頃から夏山シーズン真っ只中の8月頃にかけて、岩礫地や砂礫地に可愛らしい花を咲かせたり、雪渓周辺の草地や日当たりの良い高地の草原に大群生して見事なお花畑を形成することでも有名なチングルマ。

「チングルマ(珍車)」は、バラ科ダイコンソウ属またはチングルマ属の落葉性の小低木です。ちなみに、低木とは樹高が約3m以下のものをいい、その中でも約1m以下のものを小低木と分類されています。

チングルマは意外に成長が早く、比較的育てやすいこともあり、園芸植物としても人気があります。しかし、もともとが山地の植物なので耐暑性はやや弱めです。

花が終わるとやがて長い毛のあるタネが実ります。この長く伸びた毛が風にそよぐさまを稚児(ちご=子供)の風車に見立てて「チゴグルマ(稚児車)」と名付けられ、それが転じて「チングルマ」と呼ばれるようになったといわれています。

一枚一枚がほぼまんまるい真っ白な5弁の花びらと、その真ん中に、よく目立つ黄色い雌しべと雄しべが特徴的な花は、どこか見ているだけで微笑ましくなるような可愛らしさがあり、 “ 愛され高山植物 ” なんて表現がぴったりです。

チングルマは葉もきれいで、光で白く輝くような光沢を持っています。秋にはとても鮮やかに紅葉することから、秋のお花畑(大群生)の風景は赤い絨毯を広げたかのようだと称されるような、本っ当に見事な美しさです。

やがてタネを飛ばし終え雪が一面を白銀に染め始める頃には、花の咲いていた茎は立ち枯れの状態となり、雪に簪(かんざし)が刺さっているかのような景色をつくります。

そして、本格的な冬を迎える頃になると、雪の上に見えていた(立ち枯れ状態の)チングルマはすべてが雪に覆い隠され、長い冬を雪の中で、やがて来る春を待ちます。

チングルマの一年は、巡る季節ごとに、こんなにも華やかだったり、こんなにも風情を感じられたり、他の高山植物ではなかなか見られないくらいに豊かな彩りを添えてくれます。

木曽山脈(中央アルプス)「仙涯嶺」にて

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