運命拓け鍵の花 -サクラソウ- (花期:4月~5月)

「レッドリスト」というものをご存知でしょうか。

レッドリストとは、「国際自然保護連合(IUCN)」が作成した絶滅のおそれのある野生生物のリストで正式名称は「The IUCN Red List of Threatened Species」といいます。

日本の環境省が作成している「絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト」もレッドリストと呼ばれています。

このリストでは、絶滅のおそれのある野生生物の種を、以下のようにランク分けをおこない評価しています。

【EX】絶滅・・・我が国ではすでに絶滅したと考えられる種

【EW】野生絶滅・・・飼育下または栽培下、あるいは自然分布域の明らかに外側で野生化した状態でのみ存続している種

【CR】絶滅危惧 I A類・・・絶滅の危機に瀕している種で、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの

【EN】絶滅危惧 I B類・・・絶滅の危機に瀕している種で、IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの

【VU】絶滅危惧 II 類・・・絶滅の危険が増大している種

【NT】準絶滅危惧・・・現時点での絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧」に移行する可能性のある種

【DD】情報不足・・・評価するだけの情報が不足している種

【LP】絶滅のおそれのある地域個体群・・・地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの

地球上には絶滅の危機に瀕している野生生物の種がとても多くあります。一般に「絶滅危惧種」と呼ばれているものは、上記のカテゴリーで、【CR】絶滅危惧 I A類【EN】絶滅危惧 I B類【VU】絶滅危惧 II 類、に分類されたものを指しています。

2017年12月、 IUCN から発表された最新版(2018年8月現在)の「レッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)」によると、絶滅のおそれが高いとされる3つのランク(CR、EN、VU)に記載された野生生物は、2万5,821種にのぼります。

これは、2016年9月時点の2万3,928種を大幅に上回る結果となり、環境問題の深刻化を顕著に表す結果といえます。

しかしながら、かつて【VU】絶滅危惧 II 類(絶滅危惧種)とされながら、保全のための努力が払われた結果、ランクが【NT】準絶滅危惧に下がったという植物もあり、それが、今回ご紹介させていただく「サクラソウ(桜草)」です。

「サクラソウ(桜草)」は、サクラソウ科サクラソウ属の多年草です。高原や山地のやや湿った草原や開けた森林、河川敷の草原によく見られます。

その栽培の記録は江戸時代の元禄年間から見られ、現在は300品種を超えるまでに至っている伝統園芸植物です。現在、園芸植物で見られるものはヨーロッパで品種改良されたものも多くあり、日本の園芸界ではとくに、そのような外国産の同属の種類をサクラソウのラテン語名「プリムラ(Primula)」と呼んでいます。

プリムラはラテン語で「最初」を意味します。これはサクラソウの春いちばんに咲く習性にちなんでおり、4月から5月頃に美しく清楚な花を咲かせます。そして梅雨明けの頃には葉が黄色く枯れ、夏には休眠に入ります。

もともとのサクラソウは夏の暑さと乾燥には弱く、日本の気候風土に合っているといわれています。(とはいえ、2018年の日本は本当に暑すぎましたので、サクラソウにも相当キツかったと思われます。。。)

耐暑性はやや弱いですが、耐寒性はとても強く、冬の寒さが厳しいここ八ヶ岳南麓の地でも、毎年必ず雪解けとともに、土から葉っぱの先端をツノのように出し始めます。サクラソウが大好きには私には、それはどこか、春の訪れを告げる使者のようで、寒い寒い冬の季節が終わりを迎えたことを感じさせてくれます。

やがて葉が大きく開くと同時にその中心から一本の花茎を伸ばし、約15cm~40cmの花茎の先に花径約2cm~5cmの花を数輪咲かせます。

一見、ハート型の花弁が5枚の花に見えますが、ひとつの花弁が5つに深く裂けているもので、そのひとつひとつが浅く裂けハート型に見えています。

ドイツでは、この花の形が鍵束に似ていることから、「鍵の花」と呼ばれ、隠された財宝のドアをその花が開けるとする民話が伝わっているそうです。

サクラソウの花言葉は、さまざまにある花色や品種によっても違いますが、運命のトビラを開いていくような「鍵の花」からか・・・「運命を拓く」という花言葉がついているものもあります。

現在も準絶滅危惧種として楽観視できる種ではないものの、かつて絶滅危惧種に指定されていながらそれを脱したサクラソウは、多くの心ある人たちの努力もあり、文字通り、運命を切り拓いた花となりました。

願わくば、多くの絶滅危惧種の運命を切り拓く鍵が、私たち人間ひとりひとりの手や想いの鍵束であったらいいなと思います。

↓奥秩父山地「平沢山(ひらさわやま)」にて

↓「平沢山(ひらさわやま)」山頂からの風景(南アルプスを望む)

↓八ヶ岳南麓「KEEP協会・清泉寮(せいせんりょう)」にて

↓「清泉寮(せいせんりょう)」の広大な敷地の中の一風景(清泉寮の牧草地とファームショップ、その遥か奥に八ヶ岳を望む)

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