夏の森を彩る純白の花 -ノリウツギ- (花期:7月~9月)

私の住む八ヶ岳南麓は、当記事投稿日である2017年8月5日現在の、ここ最近の天気がずっと悪いです。ここより少し標高の低い地域で晴れ間があったと聞いても、八ヶ岳にひっかかった分厚い雲の影響を受け、この地域だけはまさに高山特有の天気となっています。

ただ、雨の日に映える花も同時に見頃を迎えてもいます。

雨の日に映える花といえば、みなさまもご存じの「アジサイ(紫陽花)」なのですが、この地域では、とくに山特有のアジサイを見かけることができます。アジサイと言えば、よくテレビで紹介されている「箱根のアジサイ電車」で見られるような手毬咲きの豪華で鮮やかな姿が思い浮かべられると思います。

手毬咲きのアジサイ。ここ、八ヶ岳南麓の清里高原では7月頃に見られます。

まず、手毬咲きのアジサイで一般に花のように見えている部分は、植物で萼(※1)と呼ばれているものです。アジサイの原種は、日本に自生する「ガクアジサイ」と呼ばれるもので、山のアジサイは花の咲き方がまさにガクアジサイに良く似ています。

※1)萼(がく)とは、花弁またはその集まりの外側の部分。

ガクアジサイの花をひとかたまりとして見ると、中心部に珊瑚状の花があり、 その周辺部に小花のように見えるものがあります。その小花の部分がアジサイの装飾花と呼ばれるもので、萼です。 この花の構造が、額縁のように見えることから「ガクアジサイ(額紫陽花)」と呼ばれるようになりました。

山中でよく見かける花に「ヤマアジサイ(山紫陽花)」があります。ヤマアジサイは、アジサイ科アジサイ属の落葉低木で、半日陰の湿り気のある林や沢沿いを好んで自生していることが多いことから「サワアジサイ」とも呼ばれています。ただ、今回ご紹介するのはヤマアジサイではありません。

写真の花ですが、こちらはヤマアジサイではなく「ノリウツギ」といいます。名前にウツギとありますが、同じアジサイ科アジサイ属の落葉低木です。樹高は2m~5mと、一般的なアジサイの1m~2mよりかなり大きいことが分かると思います。樹液を和紙を漉く(すく)際の糊に利用したため、「ノリウツギ(糊空木)」の名がついたとされます。

普通、ノリウツギの花序(※2)は円錐(えんすい)状になりますが、平開する個体もあることから、一見ヤマアジサイの白花と似て見えます。また、先端がやや倒れて他の木により掛かり、つる植物のように見えることもあり、高山稜線でハイマツ(※3)状になって見られることもあります。

※2)花序(かじょ)とは、花が茎または枝に付く、その並びかた。

※3)ハイマツ(這松)とは、高山によく見られる、地を這うような独特の樹形をもつ松。

ノリウツギの特徴として、一般のアジサイ属の花期5月~7月に対して、7月~9月と遅く、花の少ない夏にはありがたい樹種として重宝されています。おもに山地の林縁などに自生し、白く、よく目立つ花を咲かせます。

雨が多く、晴れないことが多い季節にも、森や山を彩るアジサイの仲間。

実は写真撮影において、曇りの日の方が花はきれいに撮れると言われています。それは、柔らかい光が花の美しさを引き立てるためだと言われ、とくにマクロ写真(※4)など、淡くとろける写真にはぴったりのコンディションだからなのです。

※4)マクロ写真とは、通常のズームレンズよりも被写体に近づいた状態で、被写体を大きく撮影した写真。

いかがでしたでしょうか。今回の写真はすべて曇りの日に撮ったものです。写真についてはまだまだ未熟者ですが、実際に目で見た花も色がとても美しく楽しませてくれました。曇りの日には曇りの日だけにしかできない、そんな楽しみ方はいかがでしょうか?

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