ここ八ヶ岳南麓に広がる山梨県北杜市の清里高原には、その象徴として「ヤマナシの木」というものがあります。
山や森に入れば、ほぼ見つけることができるくらい必ずどこかに生えている「ヤマナシ(山梨)」。バラ科ナシ属の落葉低木で、果実を食用として栽培される和ナシの野生種です。
ヤマナシという名前を見て気付かれたかたもいらっしゃるかもしれませんが、実はこのヤマナシ、ここ「山梨県」の名前の由来として一番有力な説の木でもあります。
その他、山をならして平地にした「山ならし」からという説、「山成し(成し=~のある場所)」を由来とする説などがありますが、奈良時代には既に「山梨郡」として見られることから一番妥当な説であるといわれています。 それくらい山梨県にはヤマナシが多いのです。
ヤマナシの木は1983年に清里のシンボルマークにもなっており、2017年現在まで34年もの間、ずっと変わらず使われてきた清里の各地でよく見かけるマークです。
ヤマナシは、4月から5月の春、あたたかい日差しの中にまだ凛とした冷たい風が八ヶ岳から吹くような季節に、真っ白な美しい花を無数に咲かせます。
夏が過ぎ、9月から10月の秋になると2~3cmほどの、ナシを小さくしたかのような実をつけ、その周囲はとても華やかで良い香りに包まれます。
私は下記写真の場所から見られる風景が大好きなのですが、清里高原の風景は、この木と共にあるといわれてもうなずけるような気がします。
清里にはちょっと有名な写真があります。
下記写真は、JR清里駅前に建てられている、清里とその歴史を紹介している大きな看板のものなのです。実は、この場所から見られる風景は前述した上記写真と同じエリアのものです。この場所も、このヤマナシも本当に見事です。いろいろな場所にヤマナシがいますが、この看板のヤマナシを探しにくるかたもいらっしゃるくらいです。
個人的に、この看板に掲げられている一文で
“ 伝えること、
守って行くもの、
そして想い描くこと
この木と共にこれからもずっと ”
という部分が好きです。
清里の歴史は開拓の歴史でもあります。聞けば、ものすごく厳しい時代を乗り越えてきた先人たちの礎(いしずえ)の上に今の清里があります。そういう人たちに感謝しながら、本来ある清里らしい豊かな自然を大切にしていけたらと思います。