ムサシの風景

日本には、日本を代表するものを3つあげた「三大○○○」があります。

例えば、古くから山岳信仰が盛んな日本において、日本を代表する霊山を3つあげた「三大霊山(三霊山)」といえば、

■富士山(静岡県・山梨県)

■白山(石川県・岐阜県)

■立山(富山県)、または、御嶽山(長野県・岐阜県)

「三大瀑布(三名瀑)」といえば、

■那智の滝(和歌山県)

■華厳の滝(栃木県)

■袋田の滝(茨城県)

になります。今回ご紹介するのは、「三彦山(さんひこやま)」と呼ばれる、古くから修験者の山として知られ「彦」がその名前に入る3つの山

■弥彦山(新潟県)

■英彦山(福岡県)

■雪彦山(兵庫県)

のひとつ、新潟県の「弥彦山(やひこやま)」です。

弥彦山は新潟県の弥彦村と長岡市にまたがる標高634mの山です。実は、この弥彦山の標高は、「東京スカイツリー」の高さ634mと同じ “634(ムサシ)” で、とても覚えやすく印象にも残りやすいです。

なので、新潟県北部から中部にかけてひろがる越後平野の日本海沿いに連なる「弥彦山脈」と呼ばれる山並みの主峰からの風景は、高低差もほぼ634mの風景で、もし東京スカイツリーの最上部に立った時に見える高低差とほぼ一緒です。

ちなみに、東京スカイツリーで一般的に展望することができる最上階は展望回廊という場所で、高さは約450mになります。そのため、あくまで634mは東京スカイツリーの最上部(デジタル放送用アンテナの先端)ということになります。

今回はそんな標高634mの弥彦山からの風景をお楽しみください。

放送局送信所

弥彦山には、新潟県内のNHK、民放各社のテレビ・FMラジオ送信所、防災無線などの中継所が山頂にアンテナを設置しています。

弥彦山は新潟県のほぼ中央に位置しているため、ここから送信することで新潟県の平野部をほぼカバーすることができています。

彌彦神社・御神廟

越後平野を一望する霊峰・弥彦山(標高634m)の御神廟(ごしんびょう)とは、山頂に祭られる彌彦神社の御廟(奥宮)のことです。

御祭神である天香山命(あまのかごやまのみこと)は和銅4年(711年)神武天皇より、越後地方の開拓の勅命を受け、日本海の荒波を船で渡られ、越の国の野積浜(現在の寺泊町野積地区)に上陸されました。

そこで早速、漁民に海水を焚いて塩を作ることや、網や釣針を用いて魚を獲る術(わざ)を教えられ、さらに弥彦に宮居を定められてから、越後を平定し、さらに住民に稲作をはじめ諸産業の御指導をされたと伝えられています。

千年以上も昔から、彌彦神社は越後一宮として「おやひこさま」の敬称で親しまれています。

佐渡島

弥彦山からは佐渡島(さどしま・さどがしま)を望むことができます。

佐渡島は、新潟県西部に位置する周囲262.7km、面積854.76km2の島で、東京都の面積で伊豆諸島と小笠原諸島を除いた大きさの約半分くらいになります。

佐渡島は島内で北海道と沖縄の、両地方特有の植物が同居する非常に珍しく豊かな植生地域であるといわれています。

そのため、農産物は魚沼と並ぶトップブランドのお米を中心に、「おけさ柿」「ル・レクチエ」などの果樹栽培も盛んです。

また、暖流と寒流の接点にあるため、多様な海産物にも恵まれています。

弥彦山から見られる佐渡島へ沈む夕日はとても美しいといわれています。

パノラマタワー

弥彦山頂上駐車場には「パノラマタワー」と呼ばれる、高さ約100mの展望塔があります。これは、展望室が360度回転しながら昇降するもので、広大な越後平野や佐渡島の浮かぶ日本海などを一望することができます。

■所要時間

8分

■定員

52名

■料金

大人650円

小人350円

※団体料金あり

多宝山

弥彦山の北に位置する標高634mの山が「多宝山(たほうざん)」です。

信濃川

眼下に流れる川は、日本最長の河川「信濃川(しなのがわ)」です。

信濃川は上流側の長野県では「千曲川(ちくまがわ)」という川になります。千曲川は山梨・埼玉・長野にまたがる標高2475mの山「甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)」の長野県側斜面(長野県川上村)を源流としており、約367kmの長大な水の旅がここ新潟で日本海に注ぎ終わりを迎えます。

能登半島

新潟県から富山県へと続く海岸線の先には能登半島が見えています。

越後平野

越後平野(えちごへいや)は新潟県の中部から北部にかけて広がる平野です。面積は、約2000km2で、東京都の面積2193.96km2と近い大きさをもっています。

別名:新潟平野(にいがたへいや)または、蒲原平野(かんばらへいや)とも呼ばれ、平野のどこからでも見通すことができる弥彦山はランドマーク的な存在となっています。

634の風景

弥彦山は海岸よりいきなり突き出した山容をしており、かの深田久弥も著書日本百名山の後書きにて「名山には違いないが絶対的な標高が足りなかった」と述べたように、標高の割に非常に秀麗な山容をしている。 (Wikipedia「弥彦山」より)

例えば私の地元、八ヶ岳の裾野に近く奥秩父山地にある、私の大っっっ好きな「飯盛山(めしもりやま)」という山は、頂上からのパノラマが本当に美しくてとても良い山だと思っています。標高は1643mですが、眼下に広がる風景の中にある清里駅の標高は1275mで、その標高差は約368mです。

それに対して弥彦山は、絶対的な標高は1000mにも満たない634mでも、西側に日本海の大海原と東側に海抜0mに近い広大な平野が広がる風景は、標高差がそのままほぼ634mに近いものになっていて、単純に数値化するなら、飯盛山の約1.7倍の高度感ある風景が弥彦山にはあることになります。

あくまでこれは私個人の価値観ですが、私の考える山の価値は標高では計れないと思っていて、そこにはさまざまな文化や歴史ともに歩む人々の生活の風景も広がっているのかと思うと、この弥彦山も本当に素敵な山で「俺式百名山」をつくるならぜひ入れてあげたい山だと思いました。ただ、私は山が大好きすぎて・・・

たぶん・・・いや、絶対に100では収まりそうにはありません。深田久弥氏も、きっとそこをなんとか100の名山に抑えようとして、苦渋の判断で「絶対的な標高」というフィルターを設けたのかな?と思うのは、あくまで私の妄想です。笑

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする