中央分水嶺をゆく -長野県・飯盛山 ~ 山梨県・横尾山ー

2018年は6月21日(木)に「二十四節気(にじゅうしせっき)(※1)」の「夏至(げし)」を迎えました。この日は一年のうちで、北半球では最も昼(日の出から日没まで)の時間が長くなり、南半球では最も昼の時間が短くなります。

※1)二十四節気とは、1太陽年(※2)を日数(平気法)あるいは太陽の黄道上の視位置(定気法)によって24等分し、その分割点を含む日に季節を表す名称を付したもの。

※2)太陽年とは、太陽が黄道(※3)上の分点(春分・秋分)と至点(夏至・冬至)から出て再び各点に戻ってくるまでの周期のことであり、およそ365.242189日である。

※3)黄道(こうどう)とは、天球上における太陽の見かけ上の通り道(大円)をいう。

日が長いので、行動時間が比較的長く取れたり、私のように植物の彩りを楽しむ人には、良い季節になってきました。とはいえ、山や高原の冬はあっと言う間に来るので、それまでの短い時間、今年もしばらく忙しくなりそうです(笑)

ここ八ヶ岳南麓に広がる清里高原や野辺山高原には、初心者の方でも比較的安全かつお手軽に登れる低山がいくつか存在しています。豊かな自然の中にありながらも、場所によっては2000m級に匹敵するような眺望が広がっていたりします。

その代表格とも言えるのが、山梨県との県境付近、長野県南牧村にある標高1643mの「飯盛山(飯盛山)」です。この時期、小中学生を中心とした多くの団体様や、時に幼稚園や保育園くらいの可愛らしいお子様たちで毎日のように混雑しています。

今回、奥秩父山地に位置する飯盛山から、東にある県境を越えた先、山梨県の標高1818m「横尾山(よこおやま)」までを結ぶ稜線をご案内いたします。そこは「中央分水嶺(ちゅうおうぶんすいれい)」という少し珍しい特徴をもった稜線になっています。

日本に降った雨は大まかに日本海側か太平洋側へ流れます。

その境界線は「分水界(ぶんすいかい)」、山岳では稜線と一致していることが多く「分水嶺(ぶんすいれい)」と呼ばれています。長野県・飯盛山付近から山梨県・横尾山にかけての稜線はまさに水の運命を日本海か太平洋に分ける「中央分水嶺」となっています。

今回は、5月度に動画版(YouTube)「賢者の森」でアップロードさせていただいた動画

【代わりに山いってきました/賢者の森】#5_中央分水嶺をゆく[長野-山梨]

から、見える風景や辿り着ける場所を解説してまいりたいと思います。

■動画 1:35 ~ 2:10

↓「十文字峠(じゅうもんじとうげ)」という場所に下るまでのこの区間は、高度感があり日当たりも良く、比較的ひらけた気持ちの良いスカイトレイルが続いています。

↓振り返ると飯盛山がこのように見えています。

■動画 2:36

動画で最初の音楽から2番目の音楽に切り替わってからの地点が「十文字峠(じゅうもんじとうげ)」と呼ばれる場所ですが、現在、看板などで案内などはされていません。

■動画 3:40 ~ 3:50

↓十文字峠からの坂を上りきると、下記のような風景が広がっています。

↓飯盛山が少し小さく見えるようになり、進んできた稜線(中央分水嶺)が良く分かります。十文字峠は画面右側ギリギリ見えていないです(笑)

ちなみに、飯盛山の右側の草地が少し黒く見えていますが、これは山火事によるものです。かつてここで火を使った登山者の不始末で燃えてしまいました。

↓眼下に広がる牧場は「平沢牧場」です。季節とタイミングが合えば、牛たちがのんびりと過ごす、のどかな風景が見られたりします。

↓中央分水嶺・横尾山方面の道を望んでいます。見て分かるように一旦、少し下ってからまた上る訳ですが、稜線歩きは大小さまざまなアップダウンの連続が多いです。

■動画 4:20 ~ 4:35

↓上記画像で見えていた坂を上りきると下記のような風景が望めます。飯盛山がさらに小さく見え、中央分水嶺のラインがとてもきれいに見えています。

■動画 6:00 ~ 6:20

↓「槍」と名前の付いたピークです。動画では3番目の音楽に切り替わる地点です。

↓とても狭い山頂はまさに槍の先端にいるようで、そこに三角点も存在しています。

■動画 10:55 ~ 11:10

↓「鞍骨山(くらほねやま)」の直下に来ると、一変してひらけた草地になります。

↓しかし山頂部は木々に囲まれています。鞍骨山の山頂には下記のような看板がかけられており「木賊の頭(とくさのあたま)」「川上富士(かわかみふじ)」などの別名があることも分かります。標高は1780m?1787m?とありますが、国土地理院の地図でも標高は1780mより高く1890mより低い範囲にあることは確かです。

動画では鞍骨山の山頂には登頂せず、トラバースするルートを進みます。

↓飯盛山から進んできた中央分水嶺のラインがとてもきれいに見えています。稜線を境に見えている斜面は日本海へと流れる側となります。

■動画 14:00 ~ 14:30

↓標高1818m「横尾山(よこおやま)」の山頂です。ここは山梨百名山のひとつでもあります。最短の登山口は進んできた道とは逆方向の「信州峠(しんしゅうとうげ)」となり、そちら側は多くの人が行き交っていることから道は明瞭です。

↓横尾山の標識は現在新しいものに変わっており、定期的に、朽ちたり壊れた指標・案内板・登山道などを直している方にはとても感謝です。

動画は5月初旬を狙って行きました。前述したように植物の彩りが美しくなる季節はとても好きなのですが、森林限界を越えないこの区間の中央分水嶺は木々の葉が生い茂ると、太陽の光を優しく遮る反面、眺望も優しく遮ってくれます。(泣)

↓写真は過去の5月中旬頃になります。

↓新緑の木々や、ヤマツツジの花がとても美しいのですが、動画ではこのアングルで見えていたはずの飯盛山も、木々の葉で見えなくなっています。

↓とはいえ、緑や花の彩り、木漏れ日がつくるキラキラした世界はとても美しく、これはこれで最高の楽しみのひとつでもあります。

↓実は、横尾山の山頂の少し奥には、このように木々と花々が額縁のように風景を囲み、八ヶ岳がとても美しく覗ける空間があり・・・

↓立ち位置を少し変えると飯盛山や中央分水嶺も美しく望むことができます。飯盛山が最初に比べるとだいぶ小さくなりました(笑)

山の旅は、なかなか平坦で真っ直ぐな道は無いですけれど・・・

その道が長くて険しくても、歩いてきた道を振り返って見た時に、その場所場所で、辛い思いをして歯を食いしばって乗り越えたことも、美しい風景を見たことも、素敵な出会いや発見があったりしたことも、すべてひっくるめて「素敵な旅」って思える瞬間が幸せだったり、小さくても確実な一歩一歩があったから繋がって辿り着いた充実感があったりします。

それってどこか人生にも似ていて、歩いてきた道を振り返って見た時に、同じように思える人生にしていけたらなって思います。

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