天の河原と花の尾根

昔々、諸国の神々が「瑞穂の国(みずほのくに)(※1)」の中ほどにある「斎の森(いつきのもり)」を盤座の山と定めて、八百万の神々が天下り、年に一度集まり、その歳(※2)の国を治める掟を話し合うならわしがありました。

斎庭(※3)として使われていたこの社は「斉し森(いつくしもり)」となまり、やがて「美し森(うつくしもり)」と呼ばれるようになりました。

話し合いが終わると、神々は天女を招いて舞を奉仕させました。天女は「斎の社」に出仕するときは「天の河原(あまのかわら)」で身を清め、舞衣は「羽衣の池(はごろものいけ)」で洗い清めて用いたと言われています。

やがて天女はこの地に好んで住むようになり、そこは「天女山(てんにょさん)」と呼ばれるようになりました。

※1)瑞穂(みずほ)とは、瑞々しい(みずみずしい)稲穂のこと。稲が多く取れることから瑞穂の実る国ということで、「瑞穂の国」は日本の美称として使われる。

※2)歳(とし)という漢字は、刃物を表す「戉(まさかり=鉞)」と、時の流れを表す「歩」から成り、刃物で作物を刈り取るまでの時間を表してる。そのため、過ぎ去ることや移り変わることを表す際に「年」よりも「歳」が使われることが多い。

※3)斎庭とは、神仏を祭るために清められた場所。斎み(いみ)清めた庭。「ゆにわ」と読む。

これは、ここ八ヶ岳南麓の清里高原に伝わる昔話です。

今回は、この昔話に登場する「天の河原」から、これからの季節、8月頃にかけて見られる花咲く登山道を少しご紹介させていただこうと思います。

山梨県北杜市にある八ヶ岳へのルート4つ

ここ山梨県の北杜市は八ヶ岳南麓の東側斜面に位置し、八ヶ岳への登山道もいくつかあります。美し森を起点とした地獄谷からの上級者向けのルートを除いて、その主なものを北から順にご紹介させていただきますと・・・

県界尾根ルート

大門沢林道から始まり県界尾根を経て八ヶ岳最高峰・赤岳へと至るルート。しかし、大門沢林道入り口付近には車を止められるスペースが無いので、実際には次に紹介する真教寺尾根の登山口「美し森」か「八ヶ岳美し森ロッジ(旧・たかね荘)」の駐車場を利用することになる。また、公共交通機関・清里ピクニックバスを利用するのであれば八ヶ岳に近い順から「サンメドウズ清里」「羽衣池」「美し森」のどれかで下車。登山道の終盤はやや角度が厳しいためクサリ場やハシゴが多く、落ちたら致命的な危険がある。

■駐車場

・美し森:普通車71台、大型バス5台

・八ヶ岳美し森ロッジ:普通車約30台(うまく詰めれば+5~10台)

真教寺尾根ルート

美し森を起点とした尾根を進むルート。県界尾根は清里から見て赤岳の少し右側の赤岳頂上山荘に出るのに対して、真教寺尾根は少し左側の稜線に出る。県界尾根同様、登山道の終盤はやや角度が厳しく落ちたら致命的な危険があるクサリ場が連続している。登山口は「美し森」か「八ヶ岳美し森ロッジ(旧・たかね荘)」で、登山道(尾根道)へすぐ入れる。県界尾根と似通ったルートでありながら、このルートの最大の利点は、「サンメドウズ清里」からリフトを利用すれば標高1900m地点まで体力を温存して登れること。

■駐車場

・美し森:普通車71台、大型バス5台

・八ヶ岳美し森ロッジ:普通車約30台

大泉ルート

天女山からスタートし、三ツ頭を経て、八ヶ岳の八つの峰のひとつに数えられる権現岳へと至るルート。車の場合、標高1529mの天女山山頂まで行けるうえ、駐車場やトイレも完備されている。清里ピクニックバスを利用する場合は天女山の麓に位置する「八ヶ岳倶楽部」で下車し、まず天女山への登頂を目指す。今回、紹介する「天の河原」はまさに、この尾根の途中に位置している。上記清里の2ルートとは違い超危険なところも少ないこと(とはいえ楽ではない)、権現岳手前にある三ツ頭のピークハントでも十分すぎるくらいの絶景が楽しめること、そしてアクセスの良さに加えて、下山後はJR大泉駅のすぐ近くにある温泉に入って帰るというのがこのルートの鉄板コースであり、人気が高い。

■駐車場

・天女山:普通車18台 大型バス4台

小泉ルート

八ヶ岳高原ライン(八ヶ岳横断道路)の小荒間交差点から始まるルート。周辺は駐車スペースに乏しく、交差点わきの駐車スペースに1~2台、交差点から八ヶ岳側へ伸びている舗装された道の先にある鐘掛松(登山道入り口)周辺の利用できそうな路肩に申し訳なさそうに駐車してある車を見かける。また、最寄駅のJR甲斐小泉駅は登山口から遥か下にあり、公共交通機関でのアクセスは悪い。このルートはやがて三ツ頭の手前で大泉ルートと合流する。また、ルートから八ヶ岳横断歩道に入れば三味線滝という名所に行ける。

■駐車場

・小荒間交差点:約1~2台(路肩スペース)

観音平ルート

小淵沢の観音平から八ヶ岳の八つの峰のひとつ編笠山へと至るルート。清里の県界尾根は長野県南牧村との県境に位置しているのに対して、こちらは長野県富士見町の県境に近い所を進むルートとなっている。編笠山はその名の通り編笠のような山容をした山で、登山道も山頂に向けてひたすら直線的に登っていくような危険個所の少ない登山道となっている。また、広くゆったりとした山頂からの景色も良いので、とても多くの人に親しまれている。駐車場とトイレの完備された観音平は休日には混雑していることが多い。

■駐車場(観音平の駐車場は上下二段になっています)

・観音平(下):普通車約40台

・観音平(上):普通車約30台(うまく詰めれば+5~10台)

天の河原と花の尾根

ではここからは、大泉ルート・天女山から三ツ頭に至る尾根を登りながら見られる花々を見ていきたいと思います。今回のスタート地点は標高1620m「天の河原」です。

「天女山」山頂は木々に囲まれており、展望という点ではあまり良くありませんが、標準タイムで約15分ほど登ると「天の河原」という展望の良い場所に辿り着けます。

写真では少し霞がかかってしまっていますが、眼下に北杜市・韮崎市の街並み、正面に南アルプスの山並みを望むことができます。ベンチもあり、ここまで来てお弁当を食べたり、のんびりして帰る方も多いようです。

「マツムシソウ」with「キアゲハ」

「コバノコゴメグサ」

「ヤマホタルブクロ」

「キバナノヤマオダマキ」

「オオビランジ」

「イタドリ」

「ヒメシャジン」

「マツムシソウ」

「ヤマハハコ」

「ヤマハハコ」

「セリバシオガマ」

「オヤマリンドウ」

「ヒメシャジン」

「タカネナデシコ」

天の河原から三ツ頭までの登山道で7月~8月に見られる花々はいかがだったでしょうか。ここで紹介させていただいた花が全てではありませんし、三ツ頭から先にはここで見られない花もいろいろと咲いていたりします。

ぜひ、またの機会にそんな花々もご紹介していけたらと思っております。

実は、7月7日の七夕に因んで「天の川」ならぬ「天の河原」でかけてみましたが、七夕のネタとは全く繋がる部分も無く終わってしまいました。。。

せめて、いつも支えていただいている読者の皆様が、これからも元気に充実した日々を過ごせること、たくさんの笑顔と幸せがあること、願っております。

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